「気がつけば、男女の仲に...」男の巧妙な手口に洗脳され、家族にまで見捨てられた32歳女の事情

気がつけば男女の仲に


「彼の言い方は気に障るところもありましたが、実際に成功している彼の言葉には説得力もあったため、私はすぐに動き出しました。詳細をネットで調べ、中小企業を支援する機関へ足を運び、専門家からの無料アドバイスを受けながら、事業計画書を作りました」

彼が言うように「知らない者」もしくは「知ろうとしない者」に明るい未来はないのかもしれない。そう思えるほど、春香の起業は順調に進んでいったのだ。

展示会への出店を皮切りに、春香は支援を最大限利用し、特別金利での融資を受けることができた。女性向けのスタイリッシュな商品を扱うのに相応しい渋谷区のある場所に、自分の店と会社を持つ事に成功したそう。実家を仕入先とした事で相乗効果もあり、喜ぶ家族の姿を見られる事も嬉しかった。春香は実家を出て、店に近い場所に住まいを変えた。

「起業後も、彼に相談や報告をしているうちに、気が付けば男女の関係になっていました。彼はイタリアのスーパーカーでいつも私を迎えに来てくれて、そこからドライブに行ったり、勉強になるからと今まで訪れたことがないような高級レストランや海外旅行にも連れて行ってくれました。

私には恋心があったかもしれないですが、彼にあったかどうかはわかりません。今思えば、私を思い通りにコントロールするために付き合っていただけのように感じます」

春香は宮田から引続きアドバイスを受けながら、事業拡大に邁進した。取り扱う商品は瓶詰・ドライ系・冷凍スイーツなど保存が効くものを中心にコストダウンを図り、テイクアウト専門の小型店舗を展開した。加えてネット販売も好調で、女性起業家として成功と富を手に入れるまでに至った。

「事業が軌道に乗ったときに、自分へのご褒美として、憧れていたアストンマーチンを購入しました」

一方、宮田の口調や態度はその後も相変わらずで、事あるごとに春香は次のように言われていた。

「上に立つか下で使われるか」「俺たちはどちらに立つべき人間なのか」
「キミが今のような生活ができているのは誰のおかげだ?」

「そんな話を聞かされ続けた私は、気付けばすっかり彼色に染まっていました」

ある日のこと、春香は久々に父の元を訪れた。時が止まったような古めかしい店が、春香には酷くみすぼらしく見えた。

「私は、改装資金を出すことを提案しましたが、父はこのままでよいと言いました。そして“お前は変わってしまったな。気を付けなさい、成功だけが幸せではないんだよ”と言われました。父のその言葉をすぐに思い返すような出来事が起こりました」

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