待ち合わせは新宿南口。婚活中の32歳女を閉口させた、男のデートプラン

「お笑い…?って、全く予想もしていなかった展開で、思わず聞き返してしまいました」

しかし彼は、百合の怪訝な表情に気づく様子もなく、「俺も久しぶりなんだよ〜」などと実に楽しげに呟きながら、迷うことなく劇場へと歩みを進めたという。

「別に、嫌じゃないですよ。私もお笑い好きですし。でもなんていうか…2度目のデートで行く場所か?って。もうちょっと付き合いが深くなってからでいいんじゃないかって。正直かなり疑問でした」

それでも、百合は接客のプロ。最初こそ戸惑ってしまったもののすぐに平静を取り戻し、彼のテンションに無理やり合わせたとのこと。

実際、見に行ったお笑い自体は面白く、隣で豪快に笑う笹川につられ、百合も何度も声を出して笑ったという。

「私、もともとお笑いは好きでしたが、劇場に足を運ぶのは今回が初めてだったんです。2度目のデートで来る必要あった…?という疑問は残るものの、笹川さんが連れて来てくれなかったらきっと見に来ることはなかったし、楽しさも知らなかった。そういう意味では感謝だなって」

すべてのプログラムが終わり、劇場を出たあと。百合はそんな風にさえ思っていたという。

ところが、「笹川さん、ありがとう。すごく面白かったー!」と彼女が素直に感謝の気持ちを伝えたその時、彼は、百合の心の広さを踏みにじる発言をしたとのこと。

「“実はさ…今日、百合ちゃんのことテストしてたんだ”って言ったんです」

何のことを言っているのかわからず、百合が言葉を失い黙り込んでいると、彼は自信満々に言葉を続けたという。

「“俺さぁ、彼女には、笑いのツボが自分と同じであって欲しいんだよね。それで今日は百合ちゃんをルミネに連れて来たんだ。実は密かに様子伺ってたんだけど…百合ちゃんと俺、同じところで笑ってた。だから、百合ちゃんは合格!”って言ったんです。

合格って…なぜ私が、あなたにジャッジされなきゃならないのって思いました。最初は彼の言葉にただ驚いていましたが、時間の経過とともにふつふつと怒りが湧いてきました。この男、婚活を採用面接か何かと勘違いしている?って」

独りよがりに“合格”を宣言しご満悦の彼は、その後も「百合ちゃん、お腹すいた?この後食事して帰るでしょ?どこがいいかなぁ」などと呟きながらスマホを弄り出したという。

「まったく悪びれていない彼の態度に、呆れを通り越して恐怖すら感じましたね。心のシャターが、ガラガラと音を立てて下りましたよ。だから、常連のお客様から予約のメールが来て店に戻らなきゃいけないって言い訳して半分逃げるようにして別れました。

わからなくもないんですよ。アプリでの婚活は、自然発生で始まる恋愛と訳が違う。そもそもが条件ありきだから、自分の譲れないポイントを確認したくなる気持ち、理解はできます」

思慮深く言葉を選びながら、百合は、そんな風に一応のフォローをする。

しかしそのすぐ後で、彼女はとびきりの営業スマイルを浮かべ、こう断言したのだった。

「ただ、2度目のデートでお笑いに連れて行き、わざわざ“笑いのツボ”を確認する。さらには勝手に上から目線で合格宣言する。そんな男性…私に言わせてもらえば、考慮の余地なく不合格です」

確かに、男も女もデート中お互いをジャッジし合っているだろう。

しかし、そのことを悟られてはならない。数回目のデートであからさまに合否判定をすることは、それ以降のチャンスを逃すことになりかねない危険行動であることを男性の皆さんには、忘れずにいてもらいたい。


▶NEXT:9月7日 土曜更新予定
友人の結婚式二次会で再会した元彼の、勘違いな態度とは

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