アプリで加工した姿と、リアルな自分への違和感。年間240万を美容代に費やした女の悲劇

たまたま、そのハワイアンマッサージ受講中の写真や、娘のハワイでのサマースクールの写真をSNSで上げたところ、思わぬ反響があった。

当時こぞってモデルや芸能人がハワイからブログやSNSを発信していたこともあり、素人の夏美さんもそのブームにあやかり「いいね!」や「フォロワー」が増えたという。#ママ #ハワイ #ロミロミなどの組み合わせがウケたようだ。

調子に乗った夏美さんは、インスタやツイッターなどSNSを頻繁に更新するようになった。そのために、おしゃれな服を購入し、旅行に行ったり、有名レストランを訪れたりしてキラキラネタを仕入れて、その都度記事や写真をあげた。

そして本当はマッサージサロンなんて開設するつもりはなかったが、長期休みを利用して子供とハワイに度々行きロミロミのアドバンスコースなどを受け、SNSにアップした。

実際は、友人たちにたまに施術をする程度だったが、自宅をまるでロミロミサロンのように撮影してみたりと、その虚栄はエスカレートしていった。

「こんなこと初めてでした。SNSのお陰で急に女性から“カリスマ主婦”としてネット上で羨望のまなざしを受けるようになって」

“ママなのに綺麗!そしてハワイで資格取得なんて素敵!”という憧れの目でみられ、それまで満たされなかった何かが急速に満たされるようになった。

「もちろん写真はアプリで加工して自分がきれいに映っているものを投稿するのですが。ちょっと綺麗で華やかなことをしている主婦というだけで、ブランドになるんですね。しかも、夫がハイスペだと怖いものなしです」

世間が求める“美人カリスマ主婦”という虚像を守るために


「ところが、ある日、自撮りした写真をみたら、目の下に大きなクマがあったんです。あの写真を見た時は恐怖でした」

もちろん写真には加工アプリを駆使していたが、加工した写真と本当の自分の顔との間にあるギャップが次第に許せなくなったのだという。

「SNS上では綺麗で憧れのカリスマ主婦なのに、実はただのオバサンだなんてみんなもがっかりするでしょう。みんなの期待を裏切ってはいけない、そう思いました」

そして美容皮膚科の門を初めてくぐり、ヒアルロン酸の注射をうってもらった。その後はカウンセリングを受けて、勧められるままにボトックスや高濃度ビタミンC注射なども打つようになったとのこと。

「その時はいいんです。でもすぐに元に戻っちゃうので、そしたらまた注射を打ちに行きます。自分の本当の顔が老婆に見える瞬間があって、それを見たくなくて美容皮膚科などに通い詰めるようになりました」

そして、40歳を過ぎたあたりからはさらにエスカレートして、本格的に美容に投資するようになった。美容外科でメスを使わないリフトアップなども取り入れ、最近では月額平均20万ほど遣うようになった。

「加齢の問題って、自分の努力だけではどうすることもできません。だからこそ、きれいであり続けるためには医療の力を借りることも必要だと思ってるんです。アンチエイジングできるのであればこの金額はむしろ安いとすら思いますね」

しかし、この状態に待ったをかけてきたのが、夫だった。

「初めは夫も賛成してくれてたんです。でも、金額と頻度が増えると反対し始めて。ひどいと思いませんか?夫だって妻が美しい方がいいに決まってるのに」

夫は、「そんなことをしていたら、自分の本当の姿が受け入れられなくなるからやめるべきだ」と言ってきたという。そして、その忠告をなかなか受け入れられない夏美さんに対して離婚をほのめかしてきたとのこと。

「昔からアンチエイジングは人類のテーマだと思うんです、なぜ、現代医学の力を利用して若くあり続けることがダメなのか理解できません」

そう語る夏美さんの横顔は、シミ一つなく相変わらず完璧に美しかった。そう、まるで彼女が投稿しているSNSの世界のように。

高額を支払い手に入れた「若さ」は、「離婚」という代償を負うかもしれない。


▶Next:8月8日 木曜更新予定
離婚後の女の金遣い

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