2019.08.04
7コ下の恋人 Vol.2「良かったー。じゃあ、また連絡しますね。良かったらLINEとか教えてもらっても良いですか?」
こうして、気がつけば連絡先を交換し、その後本当に彼から改めて食事の誘いが来た。
でも、一体どういうつもりだろう?彼とは30分程度しか話をしていないのだ。
年齢はどう見たって20代半ば。ということは、私よりも5歳以上は若いだろう。ビジネスの話がしたいのか、なんとなく誘ってみたのか、それとも…。
ーもしかして、怪しい保険の勧誘とか?もしくは妙なセミナーに連れて行かれる…?
智也の件で男性不信になっていたせいかそんな邪推をしながらも、ほんの少しだけ楽しみにしてしまっている自分もいる。
私はパタンとMacBook Proを閉じると、駆け足に待ち合わせの店へと向かうのだった。
◆
「あ、山口さん!」
店に到着すると、すでに席に座っていた西村晴人は、私を見つけるなり椅子から立ち上がって手を振った。
ーふふ…。なんか、子犬みたい。
嬉しそうな笑顔を浮かべる彼の顔を見て、緊張していた心が解けた。
ーイヤ、ダメダメ。気を引き締めないと。こうやって隙を見せた途端、怪しい勧誘をされてしまうかも…。
そんな私の警戒心など全く気がついていないのか、彼は「今日は暑いですね、8月が来るのが怖くなりますね」とか「何頼みましょうか?あ、何時までに会社に戻られますか?」など、一人で忙しそうに話をしている。
平日だと言うのに、彼の格好は黒いチノパンにグレーのTシャツと、非常にカジュアルだ。
「今日は、仕事?」
「あ、そうです。僕のところは、服装指定はしていないので…」
彼の「していない」という答え方が気になった。彼が服装を決める立場と言うこと…?
「もしかして西村くんって、会社のCEOとか…?」
「そうです、あれ、言っていませんでしたっけ?」
確か彼の名刺には役職までは書かれていなかったが、まさかCEOだったとは。
ーあぁ、そういうことね。だから私と繋がっておきたかったんだ…。
私の中でやっと合点がいった。彼はベンチャー企業を経営していて、ベンチャーキャピタルに勤める私とネットワークを持つことを望んでいたのだろう。もしかすると資金調達についてのアドバイスや、誰かを紹介して欲しいのかも知れない。
ーなーんだ。
無意識にそんな言葉が浮かんでしまい、苦笑いした。私はやはりどこかで、彼からの誘いに期待をしていたのだろう。
「で、今日あなたが誘ったのは?何か相談したいことでもあるの?」
こうなったら相手の要求を聞いてさっさと終わらせよう、と単刀直入に質問する。だが、彼は「え?」と驚いた顔を見せた。
「いえ、特に相談とかではなく…。ただ、何となくもうちょっと山口さんと話してみたかったんです。すみません、こんな理由じゃダメですか?」
西村晴人は口では不安げなことを言いながらも、目線をまっすぐこちらに向ける。あまりにじっと見つめるので、私の方が目を逸らしてしまった。
「いや、別にダメとかじゃなくて…。私よりもだいぶ若くて共通点もなさそうなのに、どうしてかな、と思って…」
「若いですか?もう26ですし、そんなに変わらないですよね?それに僕は、年齢とか気にしないので…」
ー26歳…?私よりも7つも下…。
わかってはいたものの、その年の差になんだか急に引け目を感じてしまう。それに、気にするしないの問題ではない。何が目的なのか、それが気になって仕方なかった。
「えっと、そうじゃなくてね」
「あ。次、何か飲まれますか?僕は…」
核心に触れたかったのに、なんとなく流されてしまった。
本当にただ私と話したかっただけなのだろうか?それとも何か裏があるのだろうか?そんな不安にかられながらも、気がつけば彼のペースに飲まれていってしまう。
ただ意外な事に、想像以上に彼との時間は楽しかった。年齢差があるから話が合わないという予感は外れ、オススメのビジネス書や雑誌、趣味の旅行などで盛り上がったのだ。
そして会社に戻るなり、先ほど別れたばかりの晴人からLINEが届く。
『今日は本当に楽しかったです。またお誘いしても良いですか?』
この7年、ずっと智也と付き合っていた私にとって、久しぶりの新鮮なLINEに思わず嬉しくなる。
まだ智也と完全に別れたわけではない手前、少しだけ罪悪感もあったが、食事だけならと思い「是非」とだけ返した。
そこから、晴人とは定期的にLINEをしている。
彼は相手に返事を求めることもなく、かと言って長々と自分の出来事を送るようなタイプでもない。気心の知れた友人と顔を合わせてたわいもない話をするような、そんな感覚。その温度感がちょうど良かった。
こんな感じで、誘われるままに3回程ランチをした帰り道。急に晴人が改まった顔をして聞いてきた。
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