家族ぐるみ Vol.8

「お願いです、許してください…」謝罪の末にたどり着いた、妻同士の奇妙な関係

「私も全く同じ。ホラ、あの人たちって一緒にいると本当に子供みたいでしょう?腹が立つこともあるけど、少年みたいに屈託のない顔で笑うのを見てると…なるべく希望を叶えたくなっちゃうのよね。全く興味ないのに私がいつのまにかアウトドアに慣れちゃったのも、そういう訳なの」

悪戯っぽく笑う律子を見ていると、律子が山本龍太のことをどれだけ大切に思っているのかがひしひしと伝わってくる。

40代とは思えないその可愛らしい姿は、2日前に美希を責め立てた般若のような顔とはまるで別人のようだった。

「ねえ、美希さん。私たち、夫の事を想う仲間同士なのね。キャンプではひどい事を言ってしまったけど…主人達のためにも、これからも仲良くしてくださる?」

律子はそう言いながら、お茶の器に指をかけた。

美しくケアされた律子の指先に目を奪われながら、美希は今一度この家族ぐるみの関係について、自身の本音を掘り下げてみる。

BBQで奴隷のように働かされたことも、私の被害妄想だった。

山本家も日向家も、付き合い方を間違えなければ悪い人たちじゃない。

律子さんの言う通り、誠くんのためにもできれば仲良くしたい気持ちはあるし…付き合い方をわきまえれば、きっとやっていけるはず…。

美希は心の中で小さく頷くと、改めて律子の目を見つめ返し言った。

「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

回答を聞いた律子はにっこりと目を細めると、お茶の器をワイングラスのように掲げる。

「主人達のために」

美希も律子の仕草にならって、器を掲げる。

温かな白い陶器の器が、ユダの裏切りのキスのようにたどたどしく触れ合い、ガチリと耳障りな音を立てた。


律子の話によれば、東京で改めて病院に行ってみたところ、蘭ちゃんの怪我も大したことはなさそうだという。

その喜ばしいニュースを聞くことができた美希は、すっかり罪の意識から解放された上機嫌な夜を迎えていた。

寝る支度を整えた真奈も、美希にしがみつきながら目を輝かせる。

......


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