
“ニクコレ”初見参の他に類を見ない意欲作!
仔鹿なのに乳を“飲むまい”とは、これ如何に?店名に違わぬ、比類の無い料理名をいきなり繰り出してきたのは、シェフの中井雅明氏。そのココロは?と問えば「蝦夷鹿のハラコなんです」と。
ハラコとは、生まれる前の胎児のこと。なるほど、乳は飲んでいないわけだ。もちろん、正当な手続きを経て取り出されているものだが、貴重なことこの上ない。
身の部分を食してみる。ぷるんと白い身からは、ほんのり甘い香りがするが、筋肉の気配は一切感じない。今まで食べてきたどの鹿とも、そしてあらゆる肉とも似ていない。未知との遭遇!
いたいけな食味を際だたせるように、カルダモン、クローブ、コリアンダーなど各種スパイスでマリネした後、にんにくやタイムと共にムニエルに。バナナのローストを添えて、フランス領の南国を想起させる仕立ても心憎い。