「私、淋しい…」一瞬で男をその気にさせる、“捨て犬系女”の秘策とは

「始まりはどうであれ私たちは真剣に付き合っていました。多いときは週に3日は彼が家に来ていたし、敦史の気持ちが向いているっていう安心感もあったんです」

外資系戦略コンサルティングファームに勤める敦史の帰宅は毎晩遅い。休日出勤も頻繁なので、必然的におうちデートが多かった。

二人が会うのはたいてい、美紗子が暮らす祐天寺のマンション。ちなみに敦史は麻布十番に住んでいるそうだが定かではない。

というのも、美紗子は彼の家に行ったことがなかった。

「美紗子の家の方が居心地いいって彼が言うので。一度くらいは敦史の家も行ってみたい気もするけど…彼にその気がないみたいだから仕方ない。まあ、確かに自分の家の方が敦史に色々してあげられます。夜遅いときは夜食に鯛茶漬け作ってあげたりね」

尽くすタイプの美紗子は、敦史がどこかで飲んだあと急に深夜に尋ねてきても文句一つ言わない。むしろここぞとばかりに甲斐甲斐しく世話を焼くなどした。

「それなのに」と、美紗子は再び眉を思い切り顰める。そして言葉にならないと言わんばかりに唇を震わせた。

「最近、彼がまったく家に来なくなったんです…。理由を聞くと仕事が忙しいって言うんだけど、そんなの前からだし絶対に変でしょう?」


敦史の異変に悩んだ美紗子は、同期(敦史と出会ったお食事会に参加したメンバー)に相談してみたらしい。

すると皆が揃って同じ反応をしたのだ。

「絶対におかしい。他に女がいるに違いないって皆が言うんです。私はそんなはずないって反論したけど、確かめてみた方がいいって」

しかし同期の助言を、美紗子はまるで受け入れていない様子だ。

「それで確かめてみたのかって…?いいえ、まだ」

美紗子は歯切れの悪い口調で答えると、すぅっと目を逸らしてしまった。

まだ“他に女がいる”と決まったわけではない。そもそも美紗子自身が「そんなはずない」と言ってたはずだ。

しかし、もはや聞く耳を持たぬ様子の美紗子は、顔面蒼白の表情でこう言うのだった。

「そんな…問い詰めるなんてできないです。だって、そんなことしてフラれたら?敦史がいなくなったら私、どうしたらいいかわからない…」

淋しさは、だれもが抱える感情である。淋しさを自分で埋める術を身につけてこなかった美紗子のような女は、意外と多いのかもしれない。


▶NEXT:5月21日 火曜更新予定
結婚前提だったはずが破談に…34歳女のダメ恋報告

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