「歩きながら街の人たちを見ます。怒っている人がいたら、この人はなぜ怒っているんだろう、と考えるんです。自分の仕事はお芝居をすることなので、それに生かせる何かはないかなというところから、顔を見ちゃったりしていますね。
その時に自分がやっている役で、もしかしたらこの人のような感じかもしれないと、ヒントをもらえる気がするんです」
オフの話を聞いたはずが、芝居の肥やしになる過ごし方が述べられていく。それは、女優というなかなか正解の出ない仕事に対して、悩みながらも真摯に取り組む清野さんらしいオフなのだろう。
学生時代は文武両道でわりと何でも器用にできて、陸上(走り高跳び)では全国大会に出場するほど。モデルを始めて間もなくで表紙も飾った。それが、女優に挑戦して初めて壁に当たった。
「演技ができなくて苦戦しました。負けず嫌いなので、できないことが悔しい。今でも毎回緊張しますよ。
いつもゴールが見えなくて、でも、だからこそ女優を続けられているのだと思います。もしも達成感に満たされて、ゴールがあったらやらない。答えが難しいことに、魅力を感じていますね」
もがきながら進んでいくなかで出会ったのが、『やすらぎの刻〜道』の脚本家、倉本 聰さんだった。
「倉本さんに会ってから、演技をする者としての姿勢が変わりました。今まで役作りは現場で感じるものと思っていたけど、倉本さんはキャラクター全員の年表を書くんですよ。
そのアイデアにならって役作りをしてみたら、自分のなかで役を掘りさげることができました。なんか、すごく、倉本さんに会ってからお芝居が楽しくなりました。人生の中で会えてとてもよかった方です」
そう穏やかに話す清野さんに、数分前の少年ぽさはなく、むしろ実年齢の24歳より大人びて見えた。最後に今、一番幸せな瞬間を聞いた。
「自分に余裕がないと周りが見えなくなって人に優しくできなくなってしまう。最近、それはよくないと余裕をもって人と接するようにしたら、自然と相手が喜んでくれることが少し見えてきました。
それができるようになったら、これまで人とうまくコミュニケーションをとれなかったのに、今では現場で会話をたくさんできるようになって、共演者の方に飲みにも誘っていただけるようになりました。そのことが、今嬉しくて、幸せに感じていることですね」
■プロフィール
清野菜名 1994年生まれ、愛知県出身。ティーン誌のモデルを卒業後、女優として活躍。4月スタートのテレビ朝日開局60周年記念ドラマ『やすらぎの刻~道』(毎月~金13:00~)に主演。
■衣装
【清野さん】トップス¥38,000〈LOKITHO/ALPINISME TEL:03-6416-8845〉、スカート¥37,000〈near.nippon/near. TEL:0422-72-2279〉、コート¥72,000〈CINOH/MOULD TEL:03-6805-1449〉、パンプス¥27,000〈quartierglam/Duplex TEL:03-5789-3109〉、ピアス¥13,000〈MAYU/MAYU Atelier TEL:0422-27-1778〉、バッグ¥68,000〈H.P.FRANCE TEL:03-5778-2022〉
【男性】ジャケット¥42,000、シャツ¥13,000〈ともにユナイテッドアローズ〉、チーフ¥10,000〈フィオリオ/ユナイテッドアローズ 銀座店 TEL:03-3562-7798〉、スラックス¥21,000〈デザインワークス/デザインワークス 銀座 TEL:03-3573-6210〉、タイ¥18,000〈ブリューワー/コロネット TEL:03-5216-6521〉、靴¥110,000〈サントーニ/リエート TEL:03-5413-5333〉、ブリーフケース¥49,000〈トフ アンド ロードストーン/ティーアンドエル TEL:03-6455-5520〉