略奪愛 Vol.9

「彼が狂ってくれて、幸せだった」。略奪愛を確信した女が知ってしまった、愛する男の嘘

明日香:「彼が狂ってくれて、幸せだった」


「俺と、一緒に暮らそう」

まさか…大谷からそんなことを言ってもらえるなんて、夢にも思っていなかった。

しかし彼は言葉どおり、すぐさま目黒で即入居が可能な2LDKのマンションを契約。またあの夜のようなことがあっては困るからと急かされ、私と大谷はバタバタと引越しを完了させたのだった。

−こんなことをして大丈夫なのだろうか。

私の脳裏に、その疑問が浮かばなかったわけではない。

離婚するつもりがあるとは言っても、正式な手続きが終わる前に別の女性と一緒に暮らすなんて、もし奥さんにバレたらどうするつもりなのか。

そもそも、新居の入居費用や家賃はどうしているのだろう。心配になり大谷にそれとなく聞いてみたが、彼は「大丈夫だから」と言葉を濁すだけ。そのため私は、断片的に知らされる情報から推測するほかなかった。

大谷が暮らしていたマンションは、宝石商を営む奥さんの実家所有であるらしい。また、もともと資産がある上、家業を継いでジュエリーデザイナーとして活躍する奥さん自身にも十分な経済力があるため、結婚当初からお財布は別々にしているということだった。

つまり大谷には、自由になるお金がある。そしてその使い道を奥さんが感知する術はない、ということだった。

だがたとえそうだとしても、大谷との同棲生活が正当化されるわけじゃない。そのことを重々承知していながら、しかし私も大谷も過ちに黙って蓋をしていた。

包み隠さず本音を言ってしまうと…不安や罪悪感に苛まれはしながらも、私はそれ以上に幸せだったのだ。

彼は、奥さんより私を選んでくれた。そのことが嬉しくてたまらなかった。

冷静沈着で、いつだって迅速的確に判断を下す大谷が、リスクを冒してでも私のそばにいたいと思ってくれた。他の誰でもない、私への愛欲に狂ってくれた。

その事実こそ、彼の中で私が1番になった証明に違いないから。


「明日香、本当に愛してる」
「明日香がそばにいてくれれば、他に何もいらない」

一緒に暮らすようになってから、彼は毎晩のようにそんな言葉を口にした。

「私も…私も、大谷さんさえいてくれればいい」

全てを失ってもいい。覚悟を決めてくれた大谷を、私も自分のすべてで受け止......


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