愛しのドS妻 Vol.2

愛しのドS妻:夫の不実を知った妻の逆襲。後悔しても遅い、“出来心”の大きすぎる代償

反撃、開始


−なんだ、これ…。

確実に、わざとだろう。

玄関先にこれ見よがしに置かれた、ハイブランドのショッパーたち。

シャネル、ディオール、フェンディ…すべてそれなりの大きさであることから察するに、中身はバッグか靴、もしくは洋服か。

−これ、全部でいくらだよ!?

喉元まで出かかった声を抑え、貴裕はリビングへと向かう。

華はラフなサマーニットと細身のデニム姿でソファに座り、何やら雑誌を読んでいるらしい。

貴裕の姿を認めると一瞬だけ視線を上げたが、何の言葉も発さずまた俯いてしまった。

「…華は今日、お買い物してきたの?」

できうる限り柔らかい声で尋ねたが、完全に棘を抜くのは難しかった。そしてほんのすこしだけ混じった苛立ちをも、華は見逃さないのだ。

まずい、と思った時にはもう、睨むような目と目が合ってしまった。

「だって不倫女に使うお金があるほど、有り余っているわけでしょ?奈美子にいくら使ったか知らないけど、私にはその10倍はかけてもらわないと気が済まない!」

最後はほとんど叫んでいた。しかしその挑発するような言い方は、どこか甘えているようでもある。

ほんのり赤い唇を尖らせ、貴裕を睨みつける華。

普段は凛としている彼女がこうして無茶なワガママをぶつけてくる時、それは寂しさの裏返しであることを貴裕は知っている。

「何をめちゃくちゃ言ってるんだ。そもそも不倫なんかしてないし、金も使ってない。有り余るほどの金なんか、あるわけないだろ」

宥めるような口調でそう言うと、貴裕は大きく息を吐いた。

「今日買った物は、俺からのプレゼントってことにしよう。だけどもう、あまりに度が過ぎたことはしないでくれよ」

とにかく貴裕は一刻も早くこの険悪ムードを打破し、華とうまくやっていきたい一心なのだ。

予定外の高額出費はかなり痛いが、今日のところは飲み込もう。…それで、華の気が済むのなら。

しかし貴裕はまだ気づいていなかった。

「着替えてくる」

そう言い残してリビングを去る彼の背中を、華がどれだけ冷たい目で眺めていたかを−。


寝室でスーツを脱いでいると、鞄の中でスマホが光るのが見えた。

慌てて画面を確認した貴裕は、「ええっ」と思わず出そうになった声を自身の掌で塞ぐ。

…そこに表示されていたのは、あろうことか奈美子の名前だったのだ。

今、絶対に現れてはいけない女の名前。スマホで字面を眺める......


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