Fragile Love Vol.2

Fragile Love:「丸裸に、しちゃおうかな」。誘惑にのぼせたオヤジが、美女を炎上させた夜

―俺、何のために頑張ってるんだっけな...。

メガバンクのエリート銀行員・岩崎弘治(40歳)は、最近こんな疑問に駆られている。

仕事はイケイケでも、プライベートでは長年連れ添った妻に逃げられ、特筆すべき趣味もない中年男。

だが、いまいちパッとしない寂しい日々を送る彼の前に現れた美女・秋月瞳(30歳)の存在によって、男の生活はガラリと変わるー?

これは、出世争いに必死に勝ち抜いてきた社畜オヤジに突如訪れた、新橋を舞台に繰り広げられるファンタジーのような純愛物語である。


夜の銀座を、弘治は小走りで駆け抜けていた。

銀座独特の艶っぽい澄ました空気が、新橋に近づくにつれ、徐々にサラリーマンの身の丈に合った心地いい雰囲気に変わっていく。

夜22時の新橋駅前は、スーツ姿の多くの人で溢れていた。顔を赤く染め、少々大き過ぎる声で会話を交わすグループが多い。

緩んだ顔。弾む笑い声。日本はなんと平和な国だろう。

―やっぱり、タクシーに乗るべきだった...。

初乗り410円、“ちょっとそこまで”という乗り方が浸透しつつある昨今でも、弘治は相変わらずタクシーの近距離移動に躊躇いがある。

たった1メーター程度の距離を告げるとき、運転手に不機嫌な返事をされるくらいならば、多少の体力を削り、汗をかいた方がずっとマシだと思っていた。

だが、その先に自分を待つ美しい女がいるとなれば、話は全く別ではないか。

こんな状況でも、日頃のチキン心を捨てられず汗ダクになった自分が情けない。さらに、ハンカチすら持っていないことにも愕然とする。

慌ててコンビニでハンカチと制汗剤を買い、急いで『ビストロ ミヤマス』に到着すると、瞳はいつものようにピンと背筋を伸ばし、カウンター席に座っていた。

―うゎ、本当にいる...。

「遅いです」

そして、ぷぅっと頰を膨らませた彼女の顔を見た途端、必死にケアした汗が、またしても全身から吹き出していた。

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