• PR
  • 自信のない婚活女子がモテ女から学んだ、たった一つの“結婚できる女”の秘訣とは

    美沙さんが貸してくれたのは、ビオレの『薬用デオドラントZ』の全身用スプレーだった。

    出先の化粧室なので、音が漏れないようにと慎重に吹きかける。しかしこの全身用スプレーはガスじゃないせいか、噴射音がいつもより気にならなかった。洋服への白残りもしていない。

    ―よし。田辺さんに話しかけてみよう。

    美沙さんのおかげで落ち着きを取り戻しスタジオに向かうと、そこには見たくない光景が広がっていた。

    「えっ!?高橋さんって、京都出身なんですか?僕、大学は京都だったんですよ」

    それは美沙さんに楽しそうに話しかけている、田辺さんの姿だった。

    ―ふぅん...

    美沙さんは、現在33歳。3年前に結婚しているが、清潔感のある健康的な美人で、彼女のファンは社内外に多く存在する。

    「玲子、大丈夫だった?」

    美沙さんが私に近づいて話しかけてくれたとき、石鹸のいい香りがふわりとした。

    しかし私は隣にいる田辺さんを意識してしまい、その問いかけにぎこちなく微笑み返すことしかできなかった。



    私は、去年の11月にちょうど30歳になった。

    しかし誕生日直前、長年付き合っていた彼氏に「他に好きな人ができた」とふられて以来、新しい恋がまだできていないのだ。

    彼とは結婚を考えていたから、ふられたときはかなり落ち込んだ。ご飯も喉を通らず、外に出る気力もないまま数か月を過ごしたが、散々落ち込んだ後、このままではいけないと、あることを決心したのだ。


    1年後、31歳の誕生日までには、絶対結婚する、と。


    それ以来、食事会や飲み会には積極的に参加し、いわゆる“婚活”をスタートさせた。そうした出会いの場に参加すれば、その内の1人か2人の男性には食事に誘われる。しかし私はイマイチ誰にも踏み込めずにいた。

    その原因の一つが、男性との接近戦に自信がない、ということだった。

    私は汗っかきで汗のニオイが気になるから、ノースリーブを着ることや、気になる男性に近づくことに抵抗がある。一度食事会に遅刻しそうで、ダッシュで駆け込んだら、隣にいた女友だちにも指摘されたこともある。

    今日だって、自分のタイプである田辺さんという素敵な出会いがあったのに(仕事だけれど)、かわいくない姿を見られてしまった。

    本当は私だって、美沙さんみたいに綺麗な色の服を着て、田辺さんと近くで話したいのに…。

    「どうしたの?ぼーっとして。」

    そう言って、美沙さんが私の背中に手を置いた。


    ―あ...

    撮影前に汗をかいていたので、普段なら背中はベタベタなはず。しかし私の背中はさっき『薬用デオドラントZ』の全身用スプレーを使ったおかげか、サラサラしていた。

    「なんかバタバタしてたから化粧とか汗のニオイとか、大丈夫かなって気になっちゃって...さっきはありがとうございました」

    「ううん。玲子って可愛いのにいつも自信なさげで、つい気になっちゃうのよ」

    そう言う玲子さんの顔は涼しげで余裕があって、私もこんな人になりたいなと強く思った。



    「じゃあ、高橋さん。お疲れさまです」

    撮影が終わると、田辺さんは爽やかな顔で美沙さんに挨拶し、私にはぺこりとお辞儀をしただけで、帰ってしまった。

    ―結局、一言も話せないまま、終わっちゃった…!

    私はこのままではいけないと、ますます危機感を募らせた。

    おすすめ記事

    もどる
    すすむ

    東京カレンダーショッピング

    もどる
    すすむ

    ロングヒット記事

    もどる
    すすむ
    Appstore logo Googleplay logo