2011.10.21
受け継がれる美食遺伝子 Vol.4Chinese
店の味と料理人の個性。両者相まっての美味伝来
3人揃えばかしましい、とは女の話じゃなかったか。いや男同士とて同じこと。『四川飯店』オーナーシェフ・陳建一氏と子息で調理部長の陳建太郎氏、『スーツァンレストラン陳』総料理長・菰田欣也氏が集まると、尽きぬ話で誌面の方が尽きかねぬ。
日本の四川料理の祖・陳建民氏を父に持つ建一氏の元に、建太郎氏が料理人修業へと入ったのは大学卒業後の2002年。「何でわざわざ茨の道を」ともうひとりの師匠・菰田氏はつぶやくが、当人は「これしかない」と背水の陣。すぐに『スーツァン』に預けられるも開業2年目の勢いと繁忙に音を上げる。「クレイジーだよ! あんなに働くなんて」と建太郎氏。
一方、調理師学校の特別授業で建一氏にひと目惚れし入店を決めた菰田氏は、「料理の鉄人」アシスタントから、『陳建一麻婆豆腐店』開業『スーツァン』総料理長就任と常に『四川飯店』超特急に乗車し、きりきりと働いて腕を磨いた身。「ここで逃げるな」「いや辞めたい」。菰田氏、建太郎氏の押し問答もひとしきり。その間、父はただただ見守るのみ。「見て、食べて、感じなさい」とは建民氏の弁。父の言葉を息子へと手向けるのみ。そうして、踏みとどまってこその今がある。
「味は一代。『四川飯店』の土台は守らねばならぬけれど、その先にあるのは料理人自身だよ」息子も息子同然の弟子もまた、そのことは先刻承知。師匠の懐は果てしなく深く、道は続く。
「麻婆豆腐」は『四川飯店』の礎と言うべきひと品だ。昭和30年代の日本で入手しやすい食材を使った故・建民氏版麻婆豆腐はしっかりと家庭に根を下ろした。"陳麻婆豆腐"は麻辣の両味をはっきりと示した建一氏版。ご飯にかけてかき込む至福を味わうべし。¥2,100
『スーツァンレストラン陳』開業しばらくは五里霧中の状態だったという菰田氏にとっての、エポックメイキングな皿。伊勢えびの団子を割るとじわり、エシレバターが溶け出す会心作は、今や定番。陳建民氏が生んだ、えびのチリソースの進化形と言える。¥5,775
「変わりたい、逃げたい、やらねばならぬ」の堂々巡りを断ち切るための四川留学を経て、大きく飛躍した建太郎氏のひと品はフカヒレ。「いやぁ、美味しそうだ!」と相好を崩す建一氏の顔は、師匠じゃなくて父の顔。微笑ましすぎて、言葉も出ない。¥13,650
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