2011.10.21
受け継がれる美食遺伝子 Vol.3嵐の後に、残るは信頼。継承される味と志
嵐の後に、残るは信頼。継承される味と志
「とにかく、おっかなくて」
『ダルマット』平井正人氏と『神楽坂しゅうご』廣瀬周悟氏両名が、苦笑いしながら言うのだ、同じことを。つまりはふたりの師匠『グットドール・クラッティーニ』(現在は店舗が移転し『クラッティーニ』として営業中)倉谷義成シェフの思い出を、だ。共に石神井時代の『クラッティーニ』に入店し、平井氏が4年、廣瀬氏が6年勤め上げた。当時、「3年持てば御の字」と噂された虎の穴。看板に偽りなしの厳しさだったが得るものの方が格段に勝った。
平井氏が「天才肌で、集中力がハンパなかった」という倉谷氏が独立開業時に生み出したキャベツ畑のスパゲッティ、それを食べた廣瀬氏が「この人の下で働きたい」と思い詰めたのも、道理。人と皿の求心力の強さが続く弟子達の未来を決めた。
「平井は細くて人懐っこくてね、要領が良かった。輪郭のはっきりした料理を作るよ。いつの間にか何でもできるようになってたなぁ。廣瀬は真面目で研究熱心。器用じゃないが、愚直さがいい。西麻布でランチ任せたらお客がついちゃってさ……」
少しばかり柔和になった倉谷氏がそう言う。氏自身、決して常に順風満帆だったわけじゃない。
「こんなすごいシェフにも逆境があって、だけど腕があれば何度でもやり直せるんだ」(廣瀬氏)と身をもって証明した。
「僕の料理は煮詰めて味を重ねるのが特徴。ふたりが深夜営業するのも、酒に合う味を継承してくれたからかもしれないね」
御意。人も味も繋がっている。
山椒、胡瓜、うなぎ、そしてささげ豆。で、「倉谷シェフに『捧げる』『サン・キュ・ウ』パスタ」。自家製セミドライトマトが全体を繋ぐ役割を果たす。「シャレ好きな倉谷シェフだから」。平井氏ならではの独創性が滲み出る。コース¥5,500前後より。要予約
倉谷シェフの秋のスペシャリテ、栗のニョッキには生ハムが寄り添うが、廣瀬版は今年から提供し始めた1年半熟成の自家製ハムをたっぷりと。まるで温菜のようにいただける。栗の甘さとハムの塩気のバランスがよく、セージバターの香りも食欲をそそる。¥1,550
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