好かれる人間には男女を問わず、ある共通点がある。
容姿が麗しいことはもちろんだが、実は「雰囲気」で周囲からの熱い視線を集める者たちも多い。
特別な美人でもなく、飛び抜けたイケメンでもない。でも、なぜか好かれる。
そんな者たちには、ある共通点があると気付いたのが、外資系企業で働くアキラ(30歳)。
それは、アキラが最愛の彼女にフラれたことがきっかけだった。
「理想の女性に出会ってしまった」
アキラがそう確信したのはちょうど1年前の9月だった。
丸の内で開かれた食事会で知り合い、心を鷲掴みにされたアキラは、少し強引なくらいの勢いでデートに誘った。そうして3度目のデートで晴れて恋人同士となった。
当時のアキラは29歳、彼女は27歳。当然結婚も考えていた。
彼女を喜ばせようと毎回のデートは趣向を凝らしてホテルや話題のレストランを選び、ちょっとやそっとのことでは怒らない懐の深さをアピールした。
そろそろ結婚を切り出そうかと考えていた、まさにちょうどそんな時だった。彼女からこう切り出されたのだ。
「他に好きな人ができちゃった。ごめんね」
ウインクしそうなテンションで、可愛らしい笑顔を浮かべ、悪びれることもなく彼女は言った。
「なんで……」
突然の出来事に、アキラは声を絞り出すようにして聞いた。
「ちょっと強引な所が好きだったのに、いざ付き合ってみると優しすぎて物足りなかったの」
「え……?」
アキラが言うと彼女は俯き、少し申し訳なさそうな顔で言った。
「それに…ちょっと清潔感がないっていうか、ズボラすぎるところがもう無理かなって。ごめんね」
それから2週間。
まだ傷心中のアキラは、後輩の英明(26歳)を半ば無理やり飲みに誘い、「女性は甘やかしすぎるな」と言って、西麻布のバーで管を巻いていたときに、ある事件が起こった。