「私だけの特別扱い、喜んでいいの?」素直になれぬバリキャリ代理店女子が抱く、ある疑問
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その週の土曜日、広尾にある友人宅に向かう途中、ある女性の姿が目に入った。
「あれ・・・?美貴さん」
そこは、『ナポリアイスクリーム 広尾』だった。そう言えばこの間、「広尾にお気に入りのお店がある」と言っていたのを思い出した。
―アイスクリーム屋さんだったのか。美貴さんも可愛いところ、あるんだな。
もちろん僕には気づかず、美貴さんは楽しそうにアイスクリームを注文している。それは普段会社では決して見せないような、女の子らしい笑顔だった。
―彼氏と、待ち合わせかな?
美貴さんの彼氏の有無なんて、なぜ気になっているのだろうか。それでも僕は、美貴さんから、目が離せない。
「み・・・。松下さん」
「美貴さん」と言いかけたが、この間の出来事を思い出して言い直す。
「圭太くん?」
彼女はびっくりしたように振り向いた。
「ごめんなさい、突然声かけちゃって」
「ううん。“松下さん”って呼ばれたから、誰かと思った」
「この間話したとき、迷惑そうだったから」
「いいわよ、“美貴さん”で」
美貴さんはそう言いながら微笑み、「アイス、一緒に食べていこうよ」と言った。休日に美貴さんと会うのは初めてだったので、少しドキドキする。
その誘いに乗って、僕も自分の分を注文した。
『ナポリアイスクリーム 広尾』では、できたてのクラフトアイスに好きなトッピングが選べるようだ。
他のアイスクリーム店と違い、お店にショーケースがないのには少し驚いた。
美貴さんは、バニラアイスにフルーツとゼリー。僕はココアパウダーに、コーヒーエキスをかけてもらった。
「美貴さんがこの間言っていたお店って、『ナポリアイスクリーム 広尾』のことですか?」
「そうよ。アイスクリームをその場で作ってくるなんて、珍しいでしょう」
アイスを口に含めると、バニラアイスの優しい甘さとコーヒーエキスのほろ苦さが口いっぱいに広がった。
「・・・美味しいですね!」
「でしょう?私だけのこだわりのアイスクリームが食べられるから、よく来るの」
僕は思わず、夢中になって食べた。
「さっきの話ですけど、この間“何で名前で呼ぶの?”って、ちょっと迷惑そうだったじゃないですか。本当に名前で呼んでいいんですか?」
「いいの、これも“私だけ”だから。」
「・・・?」
美貴さんは目の前でにこにこ楽しそうに笑っている。
普段は見せない柔らかな笑顔に、僕はドキドキせずには、いられなかった。
―今度、食事に誘ってもいいかな。
アイスクリームを食べ終え、美貴さんと話しながら、僕は心の中でそんなことを考えていた。
―Fin.
美貴お気に入りの『ナポリアイスクリーム 広尾』。この記事を店頭で見せていただければ、
濃厚なバニラを味わえるプレーンなアイス(トッピングなし)をおひとり様ワンカッププレゼントします。
(平日18時~20時限定)
【期間】2017年10月10日まで