気になる相手と距離を詰めるならこの街へ!一度は試したい、夏の粋な浅草デート

つい仕事中にも、今週末に迫った梨乃との浅草デートについて考えていた。酒の力を借りられない昼間からのコースづくりは悩ましい。

梨乃とは、後輩がセッティングした飲み会で出会った。透き通るような白い肌に、ストレートのロングヘアの彼女は、目が離せなくなるような不思議な雰囲気を纏っていた。

24歳には思えない落ち着いた話し方で「趣味は散歩です。お寺で御朱印とかもらったりして。地味でしょ。」と言って笑う。

「だったら土用の丑の日も近いし、浅草にうまい鰻でも食いに行く?」と誘うと、「浅草寺の御朱印は、まだなんです!」と弾ませた声が可愛らしかった。

快晴の日の吾妻橋からは、気持ちよい景色が見渡せる。

約束のお昼過ぎ、観光客でごった返す浅草駅に着くと、「少し遅れそうです、ごめんなさい…」と彼女から連絡が入った。待つ間、梨乃への手みやげを探すことにする。

駅前の人ごみに流されるまま歩いていくと、老舗の和菓子屋『亀十』の前に行き着いた。以前付き合っていた下町育ちの彼女は、ここのどら焼きが大好きだったと、ふと懐かしくなった。

大判でふわふわとした『亀十』のどら焼きは、一口頬張れば優しい気持ちになる。

辺りに漂う甘い香りに包まれるうち、手みやげはここにしようと、長い列の最後尾に並んだ。

駅の方へ戻っていると、白いワンピース姿の梨乃が、申し訳なさそうに駆け寄ってきた。『亀十』の袋を見た途端、ぱっと顔が明るくなる彼女が、純粋に可愛いと感じる。

お気に入りの店である『色川』は、浅草寺の雷門から少し離れて駒形橋へ向かう路地裏にある。創業文久元年(1861年)の、歴史ある鰻屋だ。

もちろん店の前には多くの客が列をなしている。予約が当たり前の今、女性を連れて店に並ぶ機会はほとんど無いので、心地よい空腹を感じながら二人して空きを待つのは、新鮮に思えた。

「丑の日に『う』のつく物を食べれば夏負けしないっていうけど…。平賀源内って学者が、商売に悩む鰻屋に『本日、丑の日』と貼紙をするよう助言した、江戸時代の販売促進キャンペーンがはじまりらしいんだよね。」

そう話しながら、蘊蓄が過ぎたと後悔したが、「こうしてたくさん話できたら、待ち時間も楽しい!」という彼女の笑顔に、もうほとんど心奪われていた。

カウンターとテーブル2卓だけのこの店は、ちゃきちゃきと動く母娘が切り盛りしていて、いかにも江戸前という空気が流れている。香ばしい肝焼きと、キリっとした冷酒で鰻を待つのも、しみじみと夏を感じる贅沢な時間だ。

ご飯に対して、たっぷりめのたれが嬉しい『色川』の鰻重。

『色川』のたれは甘口で、ふんわりと焼き上げられた鰻が特徴。鰻多めの「たっぷり」は重箱いっぱいに敷き詰められていて、思わず嬉しいため息が漏れる。この量でも、しつこくないのでぺろりといけてしまうのだ。

店を後にして、幸せそうにお腹をさする梨乃と二人、浅草寺の方へと戻る事にした。深い赤色の御朱印帳を抱え、お目当ての御朱印をもらいにいく梨乃が、うきうきしているのが見てとれて、こちらまで嬉しくなる。

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