2016.12.08
才色兼備な年上編集者、聡美に密かに想いを寄せる祐樹
祐樹(31歳)は出版社に勤めるファッション誌の広告営業マンだ。東京生まれの東京育ち。大学卒業後、新卒でこの出版社に入社した。
20代の頃は仕事に追われる毎日で、プライベートはそっちのけ。特定の彼女も作ってこなかった。しかし、最近周りの同級生が次々と結婚していく姿を横目に、そろそろ自分も真剣に将来について考えなければと思い始めている。
祐樹にはずっと密かに気になっている女性がいる。祐樹が広告営業を担当している女性ファッション誌の編集者、聡美だ。
聡美は佑樹の3つ年上で、2年前にこの出版社に転職してきた。彼女は機転が利くし、手際もよく仕事ができる。
さらに、ルックスも相当いい。ファッションに携わる仕事ということもあり、女子力も高く、どんなに多忙を極めていても、服装とメイクは常に完璧。艶のある髪をなびかせながらコツコツとハイヒールの音を立ててフロアを歩く彼女の周りには、いつも優雅な空気が流れている。
祐樹は聡美を尊敬していたが、次第にそれは恋へと変わっていった。自分の気持ちの変化に気づきながらも、後輩という立場もあり、祐樹はなんのアクションも起こせないままでいた。
聡美の「好きだった」発言に翻弄される佑樹は…?
11月も後半に突入し、今年も忘年会シーズンがやってきた。気の置けない友人同士ならよいが、ヘビーな仕事の飲み会が続くこの時期は、少々面倒だ…。祐樹は、上司やクライアントからの次から次へと来る忘年会の店決めに頭を悩ましていた。
仕事上、広告部員と編集部員は行動をともにする機会が多い。この日も、某腕時計メーカーのタイアップ記事の撮影のため、ふたりは朝から六本木にあるスタジオで缶詰状態になっていた。
女性モデルがヘアメイクを終えるまでの1時間半、祐樹はスマホとPCをフル稼働させて、忘年会の店選びに奔走していた。
カメラマンとの最終確認を終えた聡美は、スタジオの脇で待機している祐樹の机まで歩いてきて、正面に腰を掛けた。そして、聡美は弁当を前にして、お茶をくるくると回してかき混ぜだした。
何気なくその不思議な動作を見つめていた祐樹は、聡美と目が合ってふと我に返る。
「お疲れ。どうしたの、ぼーっとして」
「いや、聡美さん、どうしてお茶をかき混ぜていたんですか?」
「あ~(笑)、これはおまじない。大事なお守りが入っているのよ」
「お守り…?」
佑樹は聡美の話していることがよく理解できなかったが、とくに問いただすこともしなかった。
「それはそうと、祐樹に頼んでいた例の忘年会の店、予約できたの? もう来週に迫ってるのよ」
聡美は、祐樹の顔をぐっと覗き込んできた。
突然の接近に祐樹は慌てて答える。
「いえ、なんか下手に失敗できないなっと思うとなかなか決めきれなくて」
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