人形町ライフ Vol.1

人形町ライフ:おのぼり女子が東京を一周回って住みついた、「中央区」ブランドと「安らぎ」の交差する街

港区女子の由紀子が、街によって生まれ変わっていく


物件探しのために人形町の交差点を出た彼女は、腹ごしらえで洋食屋の『キラク』で食事をした。

「食べ終わるころには、「絶対ここに住もう!」って決意してました」

『芳味亭』『キラク』『小春軒』。人形町には、有名な老舗洋食屋が軒を連ねている。

「正直、雰囲気がいいだけのバルだのビストロより、私は『食事は食事』って食べたかったんです。グランメゾンでフランス料理を御馳走になってた時だって、心の中では「スープと食事を一緒に出して!」って思ってましたから(笑)」



駅近の1LDK、築浅物件で205,000円

人形町は、今なおマンションの建設が相次いでいる。中央区も若い世代を招こうと、様々な待遇施策をうっている。

彼女が選択した、人形町の交差点から徒歩3分、築2年のマンションは、家賃205,000円。女性一人で暮らすには、かなりの高額である。

「その頃、年収が950万くらいだったので、ギリギリですよね。年収の25%ですから」

人形町に出会う前は、付き合っていた男性からの支援も考えていた由紀子だが、引っ越してからはすべて自身の給料で払っているという。

「その時思ったんです。“もっと稼げるように頑張ろう!”って。仕事は評価されてましたけど、これまでは要領だけでこなしていた気がして。支援があっての30万の家賃より、無理のない12万の家賃より、自分で無理する20万の家賃の方が、頑張れるんじゃないか、って」



果たして人形町は"住みやすい"街だったか?

「北の国からの『遺言』って回見た事ありますか?あの時、内田有紀ちゃんが、純と結婚するって決めたとたんに、ものすごく真剣なまなざしで、街の商店街をチェックするシーン。私もあんな感じで、街中歩きました」

その時の彼女の印象は、「店は多いが物価は高い」というもの。その印象は今でも変わらないという。

主なスーパーは、人形町駅を出てすぐの『マルエツ』だけ。あとは水天宮に『成城石井』を擁している。肉屋となると『今半』、卵や鶏肉は『鳥近』等、ディスカウントを売りにするような店は少なく、老舗が多いのは事実だ。

「でも、だからこそ、街が下品にならない、みたいなところがあるのかなって思いました」


飲み屋については、100点だと由紀子は言う。実際、夜の22時過ぎの賑わいで言えば、銀座や日本橋よりも、今は中央区の中では人形町界隈が最も賑わっていると言っても過言ではない。銀座のコリドーの騒がしさに嫌気のさした大人が、タクシーで人形町まで出るケースも多い。

雰囲気だけのような無駄な店が少なく、どこの店も個性的。すき焼きの『日山』、『玉ひで』、『今半』、もつ鍋の『やましょう』…

「高いところばかりじゃなくても、駅の裏にある『わかい』って味噌ラーメンも美味しいし、うなぎの『三好』なんて、有名じゃないと思いますが、日本で一番美味しいって思ってます。結構私も御馳走になってきましたから、味はわかるつもりなんで(笑)」



しかし、彼女が一番気に入っているのは、街の真ん中に、本屋である『文教堂』があるところだと言う。

「結構いい品揃えなんですよ。なんか本屋が栄えている、っていうのが、街の知性レベルを物語ってる気がします。週末になると、地元の人たちがたくさん本を買っていて、私もよく行きます。本を読むって、人生を”ちゃんとする”って感じがちょっとしますよね」


溌剌と人形町生活を語る由紀子。しかし、一つの疑問が生じる。

由紀子の言う、「ちゃんとする」とは一体どういう定義なのであろうか。

自分の給料で家賃を払い、上質な外食を嗜み、本を読むことが「ちゃんとする」という事なのであろうか?

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