恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.1

恋愛低体温女子:自他共に認める“恋愛低体温女子”が、ある男性にドキッとしてしまった理由


自ら人を好きになる経験が乏しく、何度も口説かれてようやくOKする恋愛ばかりしてきた真理子は、この感情の本質がはっきりとつかめない。

――でもドキドキしたってことは二階堂さんのこと、一瞬で好きになっちゃった!? もしかしてつき合うことになったら、これって社内恋愛?

社内恋愛のデメリット1
別れた後が気まずい

こんな言葉が思い浮かんで真理子は頭をぶるんぶるんと横に振った。
――まだつき合ってもいないのにわたし、フライングしすぎ。

真理子が勤務するメーカーは25ブランドを有していて、中小企業が多いアパレルメーカーの中では大手の部類に入る。その大手で基本、1ブランドにプレス数名の難関を突破したばかりなのに、もう恋?

何とか気持ちを鎮めなきゃ。二階堂が差し入れてくれたアイスコーヒーをひと口すすると、LINEが届いた。『M classe』とターゲット層は同年代だが、さらに高級志向を謳っているブランドのプレスをしている、“長倉怜奈”である。

怜奈のほうがプレスとしては半年先輩だが、同じ会社に勤務し同い年ということもあり、仲良くしている。

「突然だけど今夜空いてたら飲みに行かない?」

怜奈は狙った男は必ず落とす、肉食女子である。彼女ならこの正体不明の気持ちを解説してくれるかもしれない。渡りに船だと真理子は了承した。


怜奈とともに『エンポリオ アルマーニ カフェ青山』に入ると、客席に向かうべく通りすぎる怜奈を男性客が見つめる。それもそのはず、怜奈は可愛いというよりは綺麗系の美貌の持ち主で、手脚もモデルのようにすらりと長く、男性の下心を刺激する女性なのだ。

特製タパスをつまみに白ワインを飲み干すと真理子はすぐ、今日あった出来事を報告した。

「へ~、マリコ、二階堂さんにキュンとしちゃったんだ?マリコが恋するなんて、明日は雨じゃないの。珍しい」

食事会での消極的な態度で真理子の恋愛体質を知っている怜奈は目を丸くしたが、真理子は今夜、一番知りたいことを質問した。

「ねえ、これってわたし、二階堂さんに恋しちゃったってこと?」

すると怜奈が妖艶な微笑みを返しながら言う。

「マリコ、それってね……」


次回:8.10 水曜 更新予定

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