あなたが私にくれたもの♬ Vol.8

恋に破れた麻布十番ガールは、中目黒へ。純粋な恋心が生んだ、この街の思い出

これまで7回にわたってお送りしてきた、都内の男女の贈り物事情。彼女たちが恋人や夫からもらった、高級ブランド品の数々を物語と共に披露してきた。

しかし、JITTERIN'JINNの「プレゼント」の最後の歌詞を見ると、物ではなく、「あの日生まれた恋心」で締めくくられている。

この連載最後は、そんな恋心に悩み、苦しみ、一喜一憂したある女の物語だ。


新卒で大手広告代理店に入社後、世田谷にある実家を出て麻布十番で一人暮らしを始めた希子、27歳。

生活感のないこの街に染まり始める前に、等身大の自分が息を吸える街に引っ越しを決めたという。彼女が残りの20代を過ごす場所に選んだのは、中目黒だ。

「麻布十番の綺麗なマンションで生活することが当たり前になってしまって、築年数40年、エレベーターもないような住まいが凄く新鮮に感じたんです。加山雄三の『サライ』って曲知ってますか?

私、この曲を聴いたら春には桜の花びらが舞う目黒川沿いにどうしても住みたくなって、住む街を変える決意をしました」

「サライ」の歌詞にはこんな一節ある。

「恋をして 恋に破れ 眠れずに過ごす  アパートの窓ガラス越し 見てた 夜空の星」

そう、希子が引っ越しを思い立つきっかけには、麻布十番の街で芽生え、街に消えていった、甘く切ない恋心があったのだ。


六本木ヒルズにある大手外資系企業に勤める「浩平くん」(30歳)も、同じく麻布十番在住だった。海外チームを率いる敏腕マネージャーとして、業界ではそれなりに知られた人物だ。出会った当初は、「一緒に話せるのが不思議なくらい」と話していた。

プライドは高いが、気さくで気取らない彼に希子は次第に惹かれていく。彼とのLINEのやり取りは「必要な時以外はしない」スタンスで、いつも一言で完結するラフな会話は心地がよかった。

2人とも帰りが24時を回ることもあったが、仕事終わりには希子の会社の下まで車で迎えに来てくれることもあり、「ただの友達」とは言い切れない感情が芽生えるまでに、そう長くは掛からなかったという。

気付けば、麻布十番という街が、いつも2人の待ち合わせ場所になっていた。

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