週末婚2016 Vol.4

週末婚2016:嫉妬深いのは女より男? 元カレが優しいのは不幸な女にだけなのか。

前回までのあらすじ

週末だけ一緒に過ごす結婚・週末婚生活を送る諒介(31)と理帆子(35)。

結婚3周年記念日に理帆子が同居の提案をしたことから、二人はすれ違い始める。諒介は大きな仕事のチャンスをつかむが、理帆子はミラノでメインの作品が壊れるというトラブルが発生する。果たして、これは単なる事故なのか、それとも?

週末婚2016 vol.3:なぜ妻は、仕事のトラブルを夫に相談しないのか?


ホテルのチェックインも済ませずに、慌てて会場に理帆子が駆けつけると、今回の展示のメインの作品である、脚まで含め全てガラスで製作されたテーブルが、無残な姿となっていた。

全体の半分にも及ぶほど大きなヒビが、忌々しい蜘蛛の巣のように入っていた。さらに、脚も1本が折れ、もはやテーブルとしての形を保てていない状態となっていた。

今回の理帆子の展示のテーマは、「GLASS DINING」として、ダイニングで使う家具を全てガラスを用いて製作していた。

そのメインとなるテーブルは、脚の部分に江戸切子を使用していた。江戸切子は、洞爺湖サミットの際に各国国賓への贈呈品として選定されたことや、海外での日本酒ブームに乗って、江戸切子を用いた冷酒用のグラスが人気を博し始めていることから、この素材に決めたのだった。

新進気鋭の若手の江戸切子のガラス職人に頼み込んで協力してもらった、理帆子にとっても自信作であっただけに、今、目の前にある無残なガラスの塊と化したテーブルを前に言葉を失う。

「沢井さん、順を追って説明してちょうだい。昨日の連絡では、確かに無事に日本から届いたということだったはずよ。一体どうしてこんなことになってしまったの?」

「はい、ご報告した通り、予め依頼していた現地の業者が確かに届けてくれて、この会場の私たちのブースに設置されました。それが、今朝私が会場に到着した時には、この状態になっていて……。」

沢井彩は、理帆子が全幅の信頼を置くデザイナーだ。28歳と理帆子よりも7歳ほど若いが、デザイナーとしての才能はもちろんであるが、事務的な面倒な仕事であっても先回りして気を回し、着実にこなしてくれる。

デザイナーなどというのは、どこか浮世離れした部分が多かれ少なかれあり、そう言う事務的なことを不得手とする人間が多い中で、沢井彩はバランス感覚に長けていた。だからこそ、今回は現地でのコーディネートを完全に任せていたのだった。

今は責任の所在を追求している場合ではない。
初日は明日に迫っている。時間がない。
壊れてしまった以上、作品を元に戻すことはできない。
これでは恐らくカッシーナ側は、共同出展の解消を宣告してくるだろう。

失敗を避けるのであれば、RIHOKOINUIの名前は伏せ、カッシーナの展示の中の一部として使ってもらえるよう頼み込むという方法もあるだろう。それとも、残った他の作品でコンセプトを組み直し、RIHOKOINUI単独での出展に踏み切るか。

今、自分は神に試されていると理帆子は思った。

「沢井さん、コンセプトを変えます。ダイニングをガラスで表現するのではなく、他の作品を主役に変えてアートにします。」

「出展の名前は『GLASS DINING』から『GLASS ART IN DINING』に変えるわ。急いで準備よ。」

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