(終わった――)
会話の開始から5分足らずで私の意識は朦朧とし、頭の中ではJAYWALKの『何も言えなくて……夏』が流れ始めました。
こうして私は、前田敦子との会話を「相槌のみ」で対応し始めたわけですが――天上界で私を見ていたブッダが、贈り物をしてくれたのかもしれません――前田敦子はふと、こんなことを口にしたのです。
「家で映画のDVDを何本も連続で観たりするんですよ。猫を飼っているので家にいることが多いんですよね」
ね、猫ですと――。
ここで読者の皆様は知る由もないと思うんですけど、そして全然こんなことに興味もないと思うんですけど、
僕、めっちゃ猫好きなんですよ。
もう本当に猫が好きすぎて、猫が自由に走り回れないから猫に悪いって理由で部屋で猫が飼えないくらい好きで、
じゃあ猫カフェ行けやってことになると思うんですけど、猫カフェの猫は
お金目当てで接客してるキャバ嬢
であることが完全に見抜けてしまうんですよ。
それくらい猫が好きなんで、猫好きの前田敦子と会話が盛り上がらないはずがなく、
彼女が最近飼い始めた「ナポレオン」という珍しい種類の猫が、ペルシャ猫に似ているという話になり、
「ということは大島弓子の『綿の国星』のチビ猫的な?」
などと質問したり、そこから大島弓子つながりで『グーグーだって猫である』の話になり、犬童一心の映画について語り合うという、「猫からの日本映画コンボ」を炸裂させたのでした。
こうして会話の盛り上がりが最高潮に達したとき、私たちの目の前に出されたのが、最高級黒毛和牛「恵比寿牛」のステーキだったのです。
前田敦子がそのお肉を口に入れ
「このお肉、すごくおいしいです!」
と表情を輝かせた瞬間、私は勝利を確信しました。そして、勝利を確信した羽生善治の駒を持つ指先が震えるように――私は唇を震わせながら言いました。
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