営業職I「前田敦子はアイドル時代からずっと王道で来てる人だから、王道っぽいものが良いんじゃないですかね。本マグロとか」
プログラマーM「前田敦子はテレビでお肉をたくさん食べるとか言ってましたから、お肉の食べ放題で良いと思います。モーパラ的な」
デザイナーO「最近見た映画『イニシエーション・ラブ』の中で前田敦子は『ホテルから夜景が見える会食なんて最高』みたいな台詞がありました。あ、でもあれは映画の台詞だから本人はどう思っているか分かりませんね」
アシスタントS「そういえば、僕の地元に『あっちゃん』って名前の居酒屋があります」
――集まってきたのは予想以上に適当な意見でしたが、これらの中に、まさに泥沼に咲く蓮の花のような素晴らしい意見があったのです。
それは、私のアシスタントOの考えでした。
アシスタントO「前田敦子は現在、女優としての地位を確立していますが、これまでずっとアイドルとして大勢の仲間に囲まれて仕事をしてきたので、今、とてつもない孤独を感じているはずです。つまり、そんな彼女の孤独を埋めるような会食を企画すれば、彼女は間違いなく水野さんに惚れることになると思います」
そのときOの両目は、これまで見たことのないような輝きに満ちていました。これまで5年間私の元で修業を続け、1冊も本を出せていない男の目とは思えませんでした。
私はOにたずねました。
「だ、だがOよ。どんな会食を企画すれば、彼女の孤独を埋められるというんだ?」
すると、Oはニヤリと笑って言いました。「簡単なことですよ」
Oは続けました。
「まず、様々な具材の入った料理を用意してください。できれば48種類の具材が入った料理が望ましい。
それを前田敦子に食べてもらいます。そしてそのあと、その具材の中の一品を、できるだけ調理していない状態で彼女に差し出すのです。
そして、前田敦子にこう言ってください。『これが、あなたです!』。そのとき――前田敦子は気づくでしょう。
色々な具材が混ぜ合わさった料理よりも、その中の一つの食材を味わった方が、よりはっきりと素材の良さが分かるのだと。
そしてそのとき彼女の孤独は癒され、あとは前田敦子の肩をそっと抱けば『FIN』です!」
この話を聞いたとき――この男がどうして私のアシスタントに留まっているのか疑問に思い、むしろ私が彼のアシスタントになるべきなのではないかと思いました。
それほどまでにOの計画は完璧だったのです。
そしてこの「O理論」を実行に移すべく、私は様々なレストランとそのメニューを検索し続けました。その結果、たどりついたのが、
『鉄板焼 恵比寿』
です。
女優とディナー
『夢をかなえるゾウ』『人生はニャンとかなる!』などの人気タイトルを多数持つ作家・水野敬也が、有名女性芸能人とガチでデートするドリーム企画!
この連載の記事一覧
この記事へのコメント
コメントはまだありません。