まだ「とりあえず生」? 瓶ビールが優秀な理由と瓶にこだわる和食店

「生ビールと瓶ビール、どちらが好きですか?」恐らく、日本中のビール好きにこの質問をしたら、「そりゃ生の方が新鮮で旨いに決まっている!」そう答える人が大半ではないだろうか?

しかし、瓶ビールの方が実は旨さが安定しているのをご存知だろうか?今回はそんな瓶ビールの特徴と、あえて瓶ビールのみを提供している絶品和食店をご紹介。

生より安定した品質!瓶ビールが優れている理由

日本において熱処理をしていないビールは全て生ビール。つまり、生ビール(よくジョッキで出てくるビール)と瓶ビールは、どちらも生ビールなのだ。中身は一緒で、違うのはガスの注入量。

生ビールは店によって旨さが違うと感じることも多いと思うが、これはビアサーバーの手入れが的確にされているかと、生ビールが入っている樽(たる)は、シールキャップを開けた瞬間から、徐々にガスが抜け味が大きく変わってしまう特徴を持っている為だ。

対して瓶ビールは、栓を開けてコップに注ぐ、これだけで最適なガス抜きがされるため、どの店においても安定した品質を誇るのである。

前置きが長くなったが、ビールと言えば生のこのご時世に、小瓶のみにこだわって供す、和食の名店を見つけた。そこで感じたのは、主役は料理という矜持──。和食の繊細な味わいを楽しむ為には、小瓶くらいのビール量がちょうどいいんです!

ザ・プレミアム モルツ小瓶と穴子。食べ方は横田氏に相談を。塩のほか、レモン塩と、特製カレー塩がある。天つゆも用意するが、こちらは基本的に口直し用

江戸前を徹底する名店にはビールの小瓶がよく似合う『天冨良 よこ田』

麻布十番

尾がピンと立ったメゴチが見事。稚鮎2尾を揚げれば懐紙の上にサッと供す。その様は仲良く泳いでいるよう。食材の存在感を際立たせる薄い衣も美しい。

「メゴチの尾っぽが立っているのはそう揚がるよう、捌いているから。江戸前の天ぷらは尾を残して捌き、何の魚か、パッと見でわかるよう出すのが基本」

店主・横田恒夫氏は言う。今の場所に移転して8年、独立してから数えれば37年にもなる『天冨良 よこ田』は、江戸前で獲れた鮮魚にこだわる名店。氏は今も毎朝、河岸へ行き、自身の目で見てから魚を仕入れる。

「見なきゃ、良さはわからない。サイズとか値段じゃないから」

「江戸前は別格」のメゴチ。料理はすべておまかせより。このコースのみを提供し、後はお好みで追加注文する

ビールは、店が開店した当初から小瓶のみ。今はシャンパンとワインの人も増えたが、それでも多くの客がまず、ひと口のビールでゴクリと喉を潤す。そして、横田氏と対峙する。

「メゴチや穴子といった底魚はしっかり揚げることで衣に香ばしさが出てくる。キスは繊細だからね、サッと衣だけ揚げるイメージ。味の繊細な白身をタネにすることが多いのは天ぷらこそ素材を食べる料理だから。衣は旨みを閉じ込めるためにある」

含蓄ある話に思わず聞き惚れる。氏の天ぷらに対する愛は別格。愛しているからこそ天ぷらを思いっきり楽しんでほしいと望んでいるし、今の時季に美味しい魚介、それから野菜も存分に食べてほしいと心から願っている。そうした熱意の延長線上に、ビールは小瓶の選択がある。

稚鮎は丸のまま揚げる

「ウチは料理屋。魚介で6品、野菜で6品、海老を2本行ってから、〆に小海老のかき揚げで天茶か天丼。ビールばっかり飲んじゃうと腹が膨れて天ぷらが入んなくなっちゃうよ(笑)」

揚げたての美しさに目を見張り、食せば心地良い衣の食感と素材の滋味が口一杯に広がる氏の天ぷら。旨さに陶然となる。

「揚げているときの音も天ぷらの醍醐味。五月晴れのときと、梅雨時とで音も変わるんです」

ビールの炭酸で胃袋を心地良く刺激したら、いざ天ぷら──。粋な夜の口開けだからこそ、ビールは小瓶がちょうどいい。

「メゴチの別名は花魁。扇形に広がった尾が花魁の髪型に似ていたから」と横田恒夫氏。この道40年の職人だ

内観

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