小熊系男子、健太郎の語る「銀座という街」の隠された欲望とは一体!?
シンゴは、最近東京に来たばかりで、正直なところ日々奮闘していて精一杯な事や、新たなライバルとの出会いに打ちのめされたこと、そして修行を経て、自分をブラさずにいつつも、やはり東京というこの街を攻略していきたいことを語った。
「シンゴさん、それすごいわかりますよ。僕も東京に来たばかりの時はそうでしたから。」
健太郎はそういうと、〆のからすみ蕎麦を食べながら語り始めた。
「ぼくの場合は、この銀座という街に育てられましたから。」
彼曰く、銀座という街は、東京を語るには外せない街なんだという。
きらびやかなブランドショップが立ち並び、夜は高級クラブや鮨屋が軒を連ねる街、銀座。渋谷や六本木と違った上品な雰囲気の、紳士・淑女が歩く伝統を重んじる街。そこにいる人たちは、みな誇り高い一流の振る舞いに身を包んでいる。
だが、光があれば闇もある。昼間の歩行者天国を見ると、ほとんどが中国系の外国人がブランド物を買い漁っている。あとは、活き活きしているのは、バブル期の逃げ切り世代くらいだろうか。表面的に取り繕ってはいるが、実情は今の日本の資本主義事情ど真ん中の、世知辛い街なのだという。
「一見、上品な雰囲気を纏ってますが、実際は六本木と変わらないんですよ。裏側に、ギラギラした気持ちを抑えながら、飲みに来ているんですよ。」
「なるほど…。そんなこと一回も考えたことなかったわ。」
「シンゴさん、もうすぐウーマンラッシュアワーですよ。一つ戦いに行きますか。何か、仕事の上でもヒントが見えるかもしれません。」
コリドー街のウーマンラッシュアワー 23時の戻りガツオ漁
『しまだ』を出ると、そこはコリドー街だった。銀座の中でも、すこしだけカジュアルな店が立ち並び、若い人たちも比較的気軽に楽しめる、少しだけ亜流のエリアだ。
「飲み会がひと段落する23時頃から人がぞろぞろ出てくるんですよ。いわゆるウーマンラッシュアワーってやつですね。」
―ラッシュアワーってそう意味やったんか…。―
「それで、六本木とか渋谷と違って、ちょっと背伸びして銀座で飲むってなると、女の子が二次会以降に行かずに是が非でも帰るってケースが多いんですよ。なんでか、上品さを保ちたいんでしょうね(笑)つまりは、ライバルがおらずナンパしやすいってことです。」
「なるほど…。でも、その銀座マジックの影響もあって、帰ろうって決めてるなら、声をかけてもついてきてくれる確率が低いんじゃ…」
そうシンゴが不安な顔をすると、まだまだですねとばかりに健太郎は大声で笑い出した。
「逆ですよ。若い女の子たちがせっかくの花金にすぐ帰りたいとか、そんなわけないじゃないですか(笑)銀座だから今日はおとなしくしなきゃって思えば思うほど、気持ちは朝まで下品に騒ぎたいモードなんですよ。」
―こいつ、小熊顔のクセに相当考えとるぞ…。―
「僕はそれを、『戻りガツオ』って呼んでるんですよ。戻りガツオ、いいですよー。銀座という冷たい海から、六本木とか恵比寿のいつもの温い水に戻ろうとする、脂が乗った感じが最高です(笑)」
そういうと、早速戻りガツオらしき三人組の女子を見つけた健太郎は、一瞬の交渉の元、さらっと次の店での会を取り付けてきた。
「さっ、いきますよ。」
そいういうと、一向はタクシーに乗り込み、次の戦場へと向かっていった。
―一体、こいつ何者なんや…。東京という街のポテンシャル、計り知れないで…。―
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