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東京☆ビギナーズ Vol.10

東京☆ビギナーズ:「飲み放題以外のシャンパンを頼む女」との遭遇と、東京女子最大2,000円理論。

最高の撮影のために営業ができるただ一つのこと。


「理恵さん、そういうことなんだよ。」

「はぁ。それで今日は関西弁じゃないんですか。」

「そうなんだよ。」

「気持ち悪いです。」

「…。」

「でも、その程度の事じゃ、全然成長できていないんじゃ・・・」

「バカ!お前は俺の何をみているんだ。モデルちゃんへの差し入れを見てみろ。」

「あ、ラデュレのマカロンになってる!今まで551ばっかりで不評だったのに!」

「俺も成長したんだよ…。」

モデルとの合コンで、まさかの「ヴーヴお化け」に遭遇。


どさくさに紛れて、撮影に来ていた駆け出しモデルの連絡先を聞いたシンゴは、週末の恵比寿で合コンを開いた。

相手の幹事は、「めぐみ」だ。現在23歳、そこまで有名ではないが、モデル活動をしはじめたばかりの、半分素人の女の子である。お互い、同僚を連れての3:3の会である。

今日は幹事ということで、スマートに会を切り盛りする。

― 今日にいたっては、関西弁を少し抑えていこう。俺は郷に従うんだ。―

そういって、冷静に幹事業務を遂行していると、めぐみが連れてきた一人の女子から、予期せぬ言葉が発せられる。

「私、今日シャンパン飲みたいです♡ヴーヴ・クリコ頼んじゃいますね♡」

―ちょっとまて。ヴーヴは飲み放題には入ってないんやで??―

思わず脳内で関西弁がこぼれる。六本木中心に出没するといわれる、「シャンパンなどのコース外の注文をしたがるお化け」に、運悪く遭遇してしまったのだ。シャンパンをポンポン空けるポン女的な女のおかげで、会計が予想外に跳ね上がって苦しむという男女の会は東京ではよくあるらしい。

結局、何本かシャンパンを開けてしまい、お会計が跳ね上がってしまった。

「さて、会計どうするかな…。今日のお店、最悪奢りでもよかった価格帯だったのに、無駄にボトルが入ったからな…。」

「シンゴさん、女子のお金なんですが…どうしましょうか。さすがにボトル飲んじゃったんで、いくらか払いますよ??2,000円…くらいですかね?」

気を使ってこっそり幹事のめぐみが声をかけてくれた。

シンゴは悩んでいた。正直なところ、一人当たり1万円を超えてしまっていた。そういった会計の場合、男性の他のメンバーへも気を遣うため、女子からの4,000円くらいは貰うのが今日の相場であり、関西では全然デフォルトだった。

が、謎に「東京女子最大2,000円ルール」が、彼を悩ませる。


その時、シンゴの脳内で、恩師Mの言葉が浮かび上がった。

『郷に入っては郷に従え。ただし、自分は捨てるな。』

―そういう事だったのか…。―

「女子の皆さん、一人当たり、『2,200円』ください。」

「えっ、何そのめんどくさい金額。」

「ヴ(2)ーヴ(2)価格ですよ!!!」

「う、うん。(最悪…)」

―よし、これで少しでもキャッシュフローを改善しつつ、東京女子2,000円ルールのギリギリセーフのところで納めれたぞ!―

この後、どの女子とも連絡が返ってこなかったのは言うまでもない…。

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東京☆ビギナーズ

大阪から東京に転勤してきた、大手インターネット広告代理店に勤める28歳シンゴの上京話。

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