結婚相手は、願わくば、幼稚舎出身で日本を代表する企業の御曹司や、企業のオーナー社長・・・
検索すると数千件というその男にまるわる記事が出てきた。掲示板の類には、軽井沢と北海道ニセコ、沖縄恩納村や、京都の左京区に別邸があるといった嘘とも誠ともとれないタレコミまである。
検索するほどに、アンの中にどす黒い気持ちが渦巻いていくのがわかる。
アンの理想は、やはり堅気のビジネスを展開する企業のオーナー社長が理想だった。女子アナの結婚相手としては定番の、野球やサッカーなどのスポーツ選手は、瞬発力はある一方選手生命は短いため、一生を預ける売却先としては、賢くないと考えていた。願わくば、幼稚舎出身の日本を代表する企業の御曹司と結婚した山岸舞彩や、ネット証券企業の大社長と結婚した大江麻理子アナのゴールが理想的だ。
サエコのお相手は、まさに、アンの理想であった。
欲しいものは、必ず手に入れるアンにとって、唯一手に入れられなかったキー局の女子アナの称号は、鬱屈とした感情となって、とぐろを巻いている。地方の女子アナとして鬱屈としているアンが、名誉挽回し、一発逆転一躍王座に返り咲くためには、強烈にハイグレードな結婚相手を渇望するのは、そんなに気が狂った発想ではないはずである。
ぐるぐると渦巻く嫉妬と渇望は、次の獲物が見つかれば、その殺傷力たるや、大学1年のサエコをサークルから追放した比ではないかもしれない。
アンは、Facebookで男のページにたどり着いた。
そこから、共通の知人を見つけると、にんまりと微笑んだ。
「高いお金を出して飼う必要のない雑魚なのに、錦鯉と錯覚しているなんて可哀想。ちゃんとした錦鯉に出会えば、きっとわかるはず。」
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