東京人生ゲーム Vol.9

東京人生ゲーム:タカハシ「企業戦士たちの嫉妬をパワーに変えながら、日本経済は成長していく。」

慶應大学卒業後とある総合商社に勤めた拓哉のその後を追った「東京人生ゲーム」。今日18時に最終話が公開される。

44歳になった拓哉は一体どこで何をしているのだろうか?最終話を前に、拓哉の人生に関わった男女が登場。彼らたちは拓哉という男を、そして東京という街をどう見ていたのだろうか?

同期タカハシ「俺とお前。勝ち組はどっちだ?」


よく覚えています。拓哉のこと。

とある総合商社に入社して同じ部署に配属された同期は、僕と拓哉だけでしたからね。

早稲田大学の鉄道研究会に所属していた僕は、華やかな学生時代とは無縁で過ごしました。学食で女と戯れて楽しそうに騒いでいるテニスサークルのチャラチャラした男達を横目で見ながら、全く気にしていないように。でも視界の端っこで猛烈に意識しながら、すするゴムみたいなラーメンの味。拓哉、あなたは知っていますか?

根っからの真面目な性格で、女性とのコミュニケーションが苦手な僕を、先輩たちは、最初こそ面白がって合コンに誘ってくれました。しかし、シュートどころか気の利いたパスも出せず、せっかくのキラーパスをもらっても決めきれない僕は、スタメンから外され、声がかかることもなくなっていきました。

そんな僕とは反対に、夜のピッチで一際輝いていたのが拓哉でした。先輩たちに気の利いた中村俊輔並みのスルーパスを何本も送り、こぼれ球は自分できっちり決めていた拓哉は、まさに夜の岡崎慎司のような働きで、得点とアシストを量産。先輩たちから可愛がられていましたね。

「カンナムスタイル」も、「恋するフォーチュンクッキー」も、KARAの「ミスター」でさえ歌って踊り、自らを「有望株」と汚れ役を買って出て、先輩たちを引き立てる。その弾けっぷりは、時として女性の顔を引きつらせていましたが、先輩をもてなすための減私奉公を徹底していた拓哉は、悔しいけど、圧倒的なオーラを放っていました。

それでも、勝つまでやり続ければ決して負けないという言葉を信条としていた僕は、コツコツ地道に来る日も来る日も仕事に向き合っていました。その甲斐あって、拓哉より早く昇格しました。

あのときの拓哉の顔ほど、僕をスカッとさせてくれたものはありませんでした。「男の価値は、夜のプレイじゃなくて、仕事で決まるのだ。」と、初めてコンプレックスの塊だった僕は解き放たれた気がしました。


しかし、数年後、拓哉、あなたは、会社を退職して、「5MINUTES」のCOOに就任しましたね。

「ふざけるな」と思いましたよ。努力に努力を重ねた結果、学生時代の敗北感を返上して、拓哉より一足早く出世したのに、違うステージに逃げるのかと。組織の中では、僕に負けていた拓哉が、ベンチャー起業のCOOという、意味不明の別次元の称号を手に入れて、まるで、僕のはるか上の次元の人になってしまったような錯覚を受けました。



だけど、44歳の今になって思います。


禍福はあざなえる縄の如し。幸福と不幸は、縄のように順繰りに訪れるといいますが、まさにその通り。

僕らがいたときに入社してきた、東大卒の8つ下のスタープレイヤー覚えていますか?メキメキと頭角を現して、僕より先に部長職についたんですよ。僕は、決して気を抜いたわけでも、仕事をおろそかにしたわけでもない。

だけど、要領が良くてコミュニケーション力もあってコツコツと努力もできる、まさに、拓哉と僕のいいところを足したような男が世の中にはまだまだいて、そういうやつが役員に、そして、その更に上を行く天才が社長になっていくのでしょう。

8つ下のスタープレイヤーもきっと、いつの日か大きな挫折を感じる日がくるのかもしれません。上には上がいる、という当たり前のことを日々噛み締めていますよ。

今日も東京では、幾多もの会社で星の数ほどの出世レースが繰り広げられています。企業戦士たちの嫉妬をパワーに変えながら、日本経済は成長していくのでしょうね。

総合商社も「5MINUTES」も捨て、自分で会社を設立した拓哉。

組織から解き放たれ、あなたは、今幸せですか?


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