2015.10.11
汐留タラレバ娘 Vol.2前回までのあらすじ
会社の後輩・桜子の豪華すぎる結婚式に完膚無きまでに叩きのめされた独身34歳3人組のアキコたち。化粧品会社で、経理課長代理として働くアキコは、仕事もそこそこ順風満帆だが彼氏はいない。そして左手薬指は3人揃ってガラ空きだ。
後輩の幸せのあら探しをして、女子トイレで毒づくことで、何とか折れそうな心を維持するものの、どうにも満たされない心のモヤモヤ。
そんな3人がトイレから出た時、同じ会社の営業部のエリート・玉置に声をかけられ、二次会として皆で飲み行くことになったが・・・
前回:陳列棚の奥へと追いやられる、34歳独身女3人
「♪会いたくて会いたくてふるえるぅー!」
玉置に誘われるままに、六本木交差点近くのカラオケ「フィオーリア ariablu」に向かったアキコたちを待っていたのは・・・
—営業部の奴らって・・・女もいたんかい!—
ひょっとしてひょっとしたらの恋のハプニングを期待したアキコたち。10分前にトイレで入念に直した化粧直しの上から再度、パフで粉を叩き込んだのに。
「ね。玉置さんって独身?」
「結婚してるって噂は聞いたことないね。」
なお美の言葉に少しだけ気分が華やいだアキコに待っていたカウンターパンチ。
指定された番号のついた部屋のドアを勢いよく開けた途端に西野カナの曲が耳につん裂く。
若い女と30オーバーを一緒の箱に入れるのは、大罪だ。隔離政策のごとくテリトリーを分けるべきなのだ。 若さの凶暴さは、ピラニアの如く我々のメンタルを食いちぎってしまう。同じ檻の中に入れられたが最後、30オーバーの女たちは無傷では出てこられない。
許されるなら回れ右をしたい。今ならボルト並みのスタートダッシュを切れる自信がある。そんなへし折られた鼻なぞ知る由もない玉置が気付いた。
「お、待ってました!どうぞどうぞー!」
個室には、玉置を最年長に、営業部の20代後半と思しき男性3人と、同じく20代中盤くらいの女性2人。営業部の若い男の子たちは、キリコたちに一瞥をくれたが、そのまま西野カナを歌っている女に合いの手を入れている。
「おいBBAが来たぞ。」「おいおい、勘弁してくれよ。」「ファンデーション厚塗りしすぎだよ」という若造たちの心の声が聞こえて来るよう。
妄想をかき消すように先制パンチで心の中で毒づく。
—この子達、お辞儀ぐらいしなさいよ。営業部、いつも請求書処理一番遅いくせに!—
若い男たちを前にするとどうしたって、心が卑屈になる。おばさんキャラに開き直れば楽なのだけど、まだそこの域にいくには早いと変なプライドが邪魔する。
「♪君を想うほどぉにつよく感じてぇー」
歌っている女は、すでに出来上がってるようで、目を閉じて気持ちよさそうに歌っている。その頬は赤く目はとろんと潤んでいる。ソファーの上に立ち、ピンクのミニスカートのワンピースからは、艶かしい生足が覗いていて、マイクを持つ二の腕は、ゴボウのように細長い。
—平成生まれって骨格も違うの・・・—
アキコは、先ほどまでの色めきたった気持ちが急速にしぼんでいく。
ふと、自分の二の腕と目があう。昔は、気にならなかったのに、最近二の腕を上げた時、ブルドックのようにタプタプと揺れる肉が、何かにつけてアキコに視線を送る。ぷるぷると気持ち良さそうに揺れるだぶつきが恥ずかしくなって、バッグに忍ばせたストールを不自然じゃないように巻く。
気付いた玉置が声をかける。
「あ、寒いですか?」
「あ、えぇ、少し・・・」そう言って顔を赤らめたが、部屋の中は、熱気でむんむん。玉置は額にうっすらと汗の粒が浮かんでいた。
なお美と貴理子がドン引きしているのも一目瞭然だ。
携帯をさりげに取り出して、電話がかかってくる振りを演じてカラオケボックスの外へと逃げた。現実を直視する勇気がない女たちは、こうして携帯の中に逃げ、男とメールをしているかのように、忙しい女、寂しくない女を演じるのだ。
【汐留タラレバ娘】の記事一覧
2016.01.04
Vol.12
2015年ヒット小説総集編:汐留タラレバ娘(全話)
2015.12.13
Vol.11
汐留タラレバ娘:34歳独身女「キス」の先にあるもの。
2015.12.06
Vol.10
汐留タラレバ娘:34歳独身女。「好き」と言われたら「彼女」認定?
2015.11.29
Vol.9
汐留タラレバ娘:叶うものなら、アウディの彼氏!
2015.11.22
Vol.8
汐留タラレバ娘:34歳独身女、ドッキドキのLOVEメール&ドライブデート・・・!
2015.11.15
Vol.7
汐留タラレバ娘:34歳独身女。「清濁併せ呑む覚悟がなければ、一生独身だよ」
2015.11.08
Vol.6
汐留タラレバ娘:社内恋愛の暗黙のルール。二人だけの秘密のはずが・・・
2015.11.01
Vol.5
汐留タラレバ娘:34歳独身女の発言は、全て「結婚」に強制タグ付けされる?!
2015.10.25
Vol.4
汐留タラレバ娘:34歳独身女、久しぶりの「女の子」扱いに、脳内ファンファーレが鳴り響く!
2015.10.18
Vol.3
汐留タラレバ娘Vol.3:34歳女。デート相手のFacebookに滲み出る「現役バリバリ感」の破壊力
おすすめ記事
2015.10.04
汐留タラレバ娘 Vol.1
汐留タラレバ娘Vol1:陳列棚の奥へと追いやられる、34歳独身女3人
2020.08.03
報道ガールの恋愛事件簿
「私、こんな格好でどうしよう…」。西麻布で男とデート中、25歳の女を襲った悲劇とは
2016.11.12
25時の表参道
25時の表参道:叶わない恋ならば、いっそ忘れたい。可憐で危険な、人妻からの誘惑
2019.07.02
ロマンスが恋しくて
「子ども、産みたい…?」誕生日に絶望感を抱いた独身の女が、“女の本能”で感じた欲求とは
2016.12.17
新・東京婚活事情
新・東京婚活事情:結婚から、逃げられない。温室育ちのお嬢様が、不幸な妻となった理由
2019.07.16
男の勘違い
「俺が独身なら、可能性あった?」既婚男の口説き文句に、美女が“イケそう”な態度をとった理由
2018.08.05
有馬紅子
「年のわりに綺麗じゃん」。働き始めた生粋のお嬢様を襲う、美しい同僚たちからの辛辣な言葉
2021.11.18
抱かれた夜、抱かれなかった夜
抱かれた夜、抱かれなかった夜:27歳OLが、付き合う前の男の部屋で「一夜を明かす」と決めたワケ
2021.04.29
マッチングアプリの答えあわせ【A】
「どうしてそんな場所に連れて行くの…?」初デートで女が困惑した、男が向かった先とは
2020.06.22
彼女のウラ世界
別れた彼女の職場に、突然押し掛ける元・婚約者。非常識な男に伝えられた、衝撃の事実
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2023.01.12
東京エアポケット
32歳女が5年付き合った彼との別れを決断。きっかけは、部屋で見つけたあるモノ
2023.01.04
8rules~エリカのマイルール~
彼と一晩過ごしたあと、急に連絡が途絶え…。2週間後に男から送られてきた衝撃のLINEとは
2023.01.08
男と女の答えあわせ【A】
鮨屋のデートで女性に幻滅した、カウンターでの“マナー”。いくら可愛くてもこれだけはちょっと…
2023.01.01
29歳のグレー
同棲するつもりで借りた芝浦のタワマン。引越当日に彼が来なくて、問い詰めたら衝撃の返事が
2023.01.17
未解決恋愛事件
1人暮らしを始めた彼の家へ、遊びに行ったら…。バスルームで見つけてしまった、まさかのアイテム
2023.01.16
東京23区夫婦
リモートワークで喧嘩が増え、2部屋借りて別々に住み始めた夫婦。あるとき、夫が住む自宅を訪れたら…?
2023.01.15
New Yorkに憧れて
飲み会帰りに女を家に泊めた男。手を出さなかったことがきっかけで…
2022.12.31
港区デイゲーム
結婚式前夜、夫以外の男とスイートルームに泊まった花嫁。夫にバレたあと、女に下された天罰とは
2023.01.07
男と女の答えあわせ【Q】
女の“あるパーツ”に悩殺されていた男。でも「出張へ行く」を最後にLINEが途絶え…
2023.01.22
男と女の答えあわせ【A】
デート中に男がうっかり漏らした“ある一言”で試合終了…。年上女性に言いがちなNGワードとは
この記事へのコメント