A1:好きだと思ったし、優しくて素敵な人だったから。
哲二とは、共通の知人の紹介で出会った。
34歳の私は、当時結婚を焦っていたことは否めない。42歳バツイチで、経営者だという哲二は、“派手だな”という第一印象だった。
腕には見るからに高級な時計、胸元にはブランドロゴが光るシャツ…。
顔はかっこいいけれど、周囲にこういう雰囲気の人があまりいないので、ちょっと圧倒されてしまった。
しかし見た目とは裏腹に、話してみるととても物腰が柔らかくて優しい哲二。
「舞香さん、広告代理店にお勤めなんですね。優秀な人が多い業界だ」
「いえいえ、そんな…」
「今度、食事でもどうですか?いい店知ってるんで」
最初から、哲二はグイグイと来た。
彼の会社は業績が好調なようで、名刺をもらった際にご丁寧に実績まで教えてきてくれた。
「去年、うちの会社、売上が3億超えたんだよね」
謙遜する様子もなく、堂々とそう言う哲二に逆に清々しさすら感じる。
34歳になり、そろそろ将来を見据えた相手を探していた私にとって、経済的にも安定していそうな哲二は、悪くない相手に見えた。
そして約束していた初デートでも、哲二の積極的な姿勢は変わらなかった。
「こういうお店、よく来られるんですか?」
「ここのオーナーと知り合いなんだよね」
「そうなんですね。さすがですね」
見栄っ張りなところも、この時はまだ“可愛いな”と思えたし、正直、この時点では“できる男”という印象しかなかった。
「舞香ちゃん、何飲みたい?」
「じゃあ…ワインをグラスで頂いてもいいですか?」
「もちろん」
デート中もスマートだったし、終始優しい哲二。
「今度は西麻布の鮨に行こう。俺の行きつけの店だから」
「はい、楽しみです♡」
彼との関係は、サクサクと進む。
ある程度の年齢になって、関係がスムーズに進むというのは、それだけ相性がいいとも言えると思う。
そんなふうに思っていたこともあり、哲二が敷いてくれたレールに、私も乗っかっていた。
そして二度目のデートで、彼はきちんと告白をしてきた。
この日は、最初は雑談から入った。
「この前、お気に入りのジャケット見つけて。80万くらいしたんだけど、良い物は長く使えるからいいかなと思って」
「すごい…私、そんな高い洋服持っていないです」
哲二のファッションセンスは、かなり独特だった。派手なブランドロゴ入りのアウターに、夜でもたまにサングラスをかけるような人だった。
でも、ファッションは個人の自由だし私がとやかく言うことではない。だから何も言わずに、ニコニコと話を聞いていた。
すると、哲二は急に私の持っているバッグの話を振ってきた。
「そうなの?でも舞香ちゃんも、結構良いバッグとか持ってるよね?」
私も、ハイブランドは好きだ。やっぱり品質がいいし、大切に使えば長く使える。何より、頑張って働いた証として自分で買うのが好きだった。
「前まで、結構ブランドが好きで。ボーナスの度に自分へのご褒美として買っていたんですけど、最近は買わなくなったなぁ。今は転職活動中ですし」
「そうなんだ。でも頑張ったご褒美って、いいよね」
そんな話をしていると、デザートタイムとなった。
その時に、花束と共に哲二が言ってくれた言葉に、私は本当に泣きそうになった。
「舞香ちゃん、僕と付き合って。結婚も視野に入れて。むしろ、今すぐ結婚してもいいと思っているくらい、好きだよ」
「本当に…?ありがとう」
こうして、幸せの絶頂にいたのに、まさか3ヶ月で関係が終わるとは、この時は予想もしていなかった…。







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