A2:お金にルーズで、ヒモ体質だと気がついた。
二度目のデートは、海斗が好きだという、恵比寿にあるお蕎麦屋さんになった。雰囲気もよく、〆のお蕎麦へ行く前にちびちび飲みながらつまめるので、好きな感じのお店だった。
「京子さん、日本酒は好きですか?」
「うん、好きだよ」
「良かった!じゃあ今日は飲みましょう」
こうして、美味しい食事と日本酒を楽しんでいると、少し酔ってきた様子の海斗が、まっすぐに私を見つめてきた。
「京子さん、俺、めっちゃ京子さんのことタイプです」
「そうなの?嬉しい」
「付き合いませんか?僕たち」
年下男子の良いところは、このストレートさと勢いだと思う。傷つくことを恐れない眼差しに、純粋な思いをまっすぐにぶつけてきてくれること。それは最近、恋愛迷子になっているアラサー以上の女子に、しっかり刺さる。
だから海斗のこの言葉は、本当に嬉しかった。
「本当に?海斗くん、酔っ払ってない?」
「酔ってないよ〜本気です」
「そうなんだ…。嬉しい。私も海斗くんのこと、好きだよ」
こうして、晴れて交際することになった私たち。私の心の中に、花が咲くように、幸せな気持ちがどんどん広がっていく。
しかし、お会計をしようと思った時のことだった。海斗が、急に焦り始めた。
「あれ?ごめん…今日、財布家に忘れてきたかも…」
「え?むしろ日中とか大丈夫だったの?」
「うん、スマホのチャージはあるから。財布出すことがなかったから、今まで気がつかなかった…ごめん、今日のご飯代の分、借りてもいい?」
それは構わない。私もたまにお財布を忘れることもあるし、忘れたならば仕方ない。
「そういうこともあるよね。いいよ、今日は私のおごりで」
「マジで?ありがとう!!必ず次回返すから」
「わかった。じゃあ次回、お願いします」
こうして、この日は私が支払った。でもここから、何度か海斗はお財布を忘れることがあった。
しかも「ありがとう」「次回返すね」と言いながら、そのお金が返ってきたことは一度もない。
そして最近のスマホにはキャッシュレス決済という、素晴らしい機能がある。仮にお財布を忘れても、その後スマホを通じていくらでも支払えるはず…。
― あれ?これって…。もしかして、確信犯?
次第にそんなふうに思うようになる。さらに私のこの疑問が決定的になったことがある。
交際してから、私の家に泊まることが多くなった海斗。吉祥寺の彼の家は狭いらしく、麻布十番にある私の家の方が広いからいいと言う。
私も、彼の家より自分の家の方が準備など楽だし、助かっていた。しかし、あまりにも私の家に泊まる頻度が増えた際に、ふと思った。
― あれ?これって、私の家をホテル代わりにしてる…?
なぜなら、彼のオフィスは六本木にある。もちろん、吉祥寺の彼の家より、私の麻布十番の家の方が近いし、なんなら徒歩でも行ける距離にある。
そりゃもちろん、私の家を選ぶだろう。彼にとっては楽だし、最高な物件でしかない。
でもここは、私が頑張って働いて、稼いで支払っている家。そこに我が物顔でいる彼に対して、段々と疑心暗鬼になってきた。
「海斗、最近仕事はどう?順調?」
「どうなんだろう。この前のイベントが終わって、今は少しゆっくりできる時期かな」
「そっか」
「京子は?相変わらず忙しそうだけど」
「私は毎日必死すぎて、記憶がないくらいだよ(笑)」
― ちょっと待って。これは彼氏ではなく…ヒモでは?
お会計の時に毎回財布を忘れたり、私の家に住み着いたり…自分は大丈夫だと思っていたし、恋は盲目と言う通り気が付かないフリをしてきたけれど、彼は立派な“ヒモ”だ。
「京子は頑張っていて、偉いよね。本当に尊敬する」
ただ、こうやって疲れて帰ってきた時に褒めてくれるし、存在自体に感謝はしている。でも今、男性を養えるほどの経済力は私にないし、せめて折半でいてほしい。
少し年上だから…という理由で頑張ってきたけれど、どちらかの負担が大きすぎる関係は長続きしないと思う。
「そういえば、もうすぐ京子の誕生日じゃない?せっかくだから、良い店とか行こうよ」
「え〜いいよ。海斗、高いお店だと支払い厳しいでしょ?」
「そこは半々でいいんじゃない?せっかくの誕生日なのに」
「じゃあお店、どこか選んでおくね」
その誕生日も、きっと私が支払うのだろう。そう思うと、一緒に出かける気が失せる。
― ダメだ。このままだと、お金だけではなく心まですり減っていく。
そう思い、健全な関係を築くため、私は綺麗さっぱり、線を引くことにした。
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