TOUGH COOKIES Vol.57

「婚約者を奪った女に仕返しがしたい…」彼女が選んだ“最大級の復讐”とは

SUMI

「私は奏には復讐しません。わざわざ私が罰さなくても、彼女はもう、地獄に片足を突っ込んだようなものですから」

「また“地獄”…」

「ええ、でも氷の地獄というよりは、灼熱の地獄、です」

麻莉奈の炎に焼き尽くされるのですから、と紗和子は小さくマッカランを食んだ。


「あの2人は生物としての熱量が違いすぎるんですよ。麻莉奈は必ず、奏に飽きてしまう。それよりも先に、奏が壊れてしまうのか、それとも2人で傷つけあうのか――とにかく2人の“真実の愛”とやらは永遠じゃない。奏もそれに気づいている。気づいているのに、恋の業火に焼かれ、絡めとられてしまった。もう自分からは離れられないでしょうね」

紗和子は「そして、もう一つの間違いは」とルビーに視線を戻した。

「私が奪われた“一番大切なもの”とは、奏のことではないということ。もちろん彼女のこともとても大切でした。でも一番と言うならば……彼女に好意を寄せられたずっと前から、私が何十年もかけて築き上げてきたもののことです」

トン、トン、と紗和子が自分の胸を叩く指先がライトを受け、朝顔が光る。

「私の誇り。それは私とアーティストの間の、絶対的な信頼関係です。

無名のアーティストと出会い、育て上げるまでには時間がかかります。そのために専属契約を結ぶのですが、私はこれまで――自分が育てているアーティストを、途中で誰かに引き抜かれたり、アーティスト自身が移籍を望んだり、ということがありません。もちろん裏切られたこともない。私がこの世界で生き始めてもう30年近くが経ちますが、その間一度も、です。

それはひとえに、私というギャラリストの仕事を、アーティストたちが、心から信頼してくれていたからだと自負しています」

それは…と遠慮がちにともみは口を開いた。

この記事へのコメント

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No Name
夢中になって読んだ。本当に面白いこの連載...
いやー安い日用品とかのデザインは、簡単にゴミ箱行きになる所までこだわるのかなぁ…。 例えば草間彌生氏なんて食器から文房具、傘やら食品パッケージ、ヴィトンやビルとのコラボまで幅広いけれど「耐えられない」とか思わないような…。  凡人が考えた復讐劇は所詮凡人レベルで終わるのかも?!
2026/03/31 06:2218
No Name
このレベルの小説が無料で読めるなんて実はすごい事なのではと思う
2026/03/31 06:4914
No Name
読みながら、紗和子のなんと言うか長年の思い上がりとか自分を過大評価して聞く耳を持てていなかった事などが透けて見えてきた。 あと玉川のイヤミったらしいキャラの描き方がお見事!紗和子相当むかついたんだろうなと....
2026/03/31 05:3413
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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