港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。
女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが、その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。
タフクッキーとは、“噛めない程かたいクッキー”から、タフな女性という意味がある。
▶前回:2泊3日の金沢出張中に何が?帰宅後に気づいた恋人の“違和感”とは
Customer8:清川紗和子(50歳)老舗ギャラリー・更紗(さらさ)の元オーナー
麻莉奈は非凡だと世界的に認められたアーティストだが、そんな彼女に“平凡という烙印”を与えて絶望させる。それが、婚約者を奪われた紗和子の復讐らしい。
「私の一番大切なものを奪ったのなら、こちらも一番大切なもの、つまり才能を奪わせてもらう。それが道理でしょう」
そう言いながら紗和子が揺らしたグラスは、空になっている。
アルコール度数が50度を超えるマッカランを、1杯目はストレート、2杯目はロックで飲み干しても、顔色も変わらず乱れる気配もない。ともみが知る中で最も酒に強いのは間違いなく西麻布の女帝――光江だが、その光江をババアと言ってのけるこの紗和子とはいい勝負なのかもしれない。
次はストレートでと紗和子は言った。グラスを変えるかを聞くことはせず、ともみが新たなグラスを手に取ると、紗和子はまたもその名を言い当てた。
「……ロブマイヤーのバレリーナ。『ワイングラスIII』ですね」
ふくよかなチューリップ…のようなぽってりとしたフォルムなのに、唇に触れる瞬間に物質の存在が消えると例えられるほど、極薄のクリスタル。紗和子がその柄を静かに傾け、香りを確かめるのを待ってから、ルビーが言った。
「まあ、そりゃ確かにさぁ…面倒見てた子に婚約者を略奪されちゃったら、ただの寝取られよりムカつくし、ぎゃふん展開希望っていうのもわかるよ」
でもさ、とルビーは続けた。
「紗和子さんは――それで大丈夫なの?」
問われたことが意外そうに、紗和子はルビーを見上げた。
「さっき紗和子さん、一番大切なものを奪われたって言ったじゃん。その“一番大切な“人に復讐なんてしてさ。恨まれてもう二度と会えなくなっても――ホントのホントに大丈夫なのかなって」
肩書きや年齢に臆することのないルビーの率直さにも、紗和子の伸びた背は崩れず、表情も揺れず。そして。
「ルビーさん、あなたは2つほど認識違いをしています。まず一つ目は」






この記事へのコメント
いやー安い日用品とかのデザインは、簡単にゴミ箱行きになる所までこだわるのかなぁ…。 例えば草間彌生氏なんて食器から文房具、傘やら食品パッケージ、ヴィトンやビルとのコラボまで幅広いけれど「耐えられない」とか思わないような…。 凡人が考えた復讐劇は所詮凡人レベルで終わるのかも?!