「普通の富裕層」が港区から消える?家賃70万円が境界線となった「超・高級賃貸」のいびつな独走

「港区」といえば、成功者の証であり、ステータスの象徴。

だが、近年の不動産価格の暴騰は、港区を「選ばれた層」からさらに「極限られた層」へ絞り込むフィルターへと進化させている。

もはや都心は「普通の富裕層」ですら住めない場所になりつつあるのだろうか。

不動産情報サービス「LIFULL HOME'S」の最新調査で判明した「家賃上位1%」の境界線は、10年前から30万円以上も底上げされ、月額70万円の大台に乗った。

独自の進化を遂げる「超・高級賃貸市場」。なぜこれほどまでの高騰が続くのか。その背景にあるマーケットの構造変化と、今まさに東京で起きている居住実態のリアルを紐解いていく。

調査背景


近年、都心へのシングル層の人口流入が増加傾向にあることに加え、中古マンションの価格高騰等の影響もあり、特に都心部や人気エリアを中心に賃料は上昇傾向にある。

これにより、これまで高級賃貸物件とされていた賃料の水準にも変化がみられた。そこで、東京23区の賃貸物件の中で、上位1%となる賃料の物件を高級賃貸と定義し、それらの物件がどのエリアに集中しているのか調査した。


10年で1.8倍に!「ファミリー向け」高級賃貸の境界線


調査結果で特筆すべきは、ファミリー向け(2DK以上)の爆発的な高騰だ。

2015年時点では38万6,000円だったボーダーラインは、2025年には70万円へ到達。10年間で実に31万4,000円(約1.8倍)もの上昇を記録した。


23区内の賃料上位1%のボーダーラインは、シングル向け(1R〜1LDK等)で月額26万4,000円以上。2015年の19万9,000円から約1.3倍の上昇。

一般的な賃貸市場が物価連動の範囲内で推移する一方で、超高額帯の物件だけが「別次元」の経済圏を形成している格好だ。

「港区」に超高級物件5割が集中!


この「超高級賃貸」は、どこに存在しているのか。データが示すのは、凄まじいまでの「局地化」である。


上位1%の物件の分布を見ると、ファミリー・シングル共に「港区・渋谷区・新宿区」の3区に集中。

特にファミリー向け物件においては、港区1区だけで全体の51.5%と過半数を占める。

港区が上位を独占!高級賃貸の駅別分布にも注目


駅別で見れば、ファミリー向けでは「六本木一丁目(10.1%)」、シングル向けでは「麻布十番(5.6%)」がトップに君臨。

東京の高級賃貸市場は、港区を中心とした極めて限定的なエリアに「偏在」しているのが実態だ。


麻布十番のシングル向け物件で最高賃料112万円、六本木一丁目のファミリー向けでは200万円を超える募集も珍しくない。

賃貸の「資産化」と「サブスク化」がもたらす構造変化


なぜ、これほどの高額賃料が成立するのか。LIFULL HOME'S総研のチーフアナリスト・中山登志朗氏は、その背景に「需要の質的な変化」を指摘する。

「東京23区の高級賃貸の高額化および市場拡大の主な要因は、富裕層のセカンドハウス需要、インバウンドの短期間の居住ニーズ、分譲物件を超える水準の高級賃貸ニーズの顕在化、都心分譲タワーマンションの転貸=利回り物件としての活用拡大などが挙げられます。

特にコロナ禍以降は、分譲マンションにも導入されていないような(ある意味実験的な)設備や仕様を実現し、賃料が高くても良質で個性的な暮らしができる居住空間が求められるようになったことが影響しています」


「また、これらの物件では予め高級家具&家電などが設置されている“サブスク賃貸仕様”も多く、周辺環境を含めた居住満足度を考慮すればコスパ良好との評価を得ている物件が数多くあります。

さらに、高級賃貸物件では共用部も充実しており、高級家具で設えたコ・ワーキングスペースや最新のゲーミングPCとモニターが設置されたオンラインゲームスペース、最速のWi-Fi環境、BBQコーナー、天然温泉、居住者専用ラウンジなどが用意されていて、トータルで考えた時の賃料水準は(借りる人にとって)妥当と考えられるコスト感となっていることも高級賃貸人気を後押ししています。

なお、高級賃貸物件は高い生活充実度を求める人が多い港区、渋谷区、新宿区ほか都心~城南・城西エリアに“偏在”していることも浮き彫りになっています」

富裕層にとって、高級賃貸物件は単なる「寝床」ではなく、職住接近の利便性と高機能な設備を享受する「合理的な選択」へと昇華しているのだ。

「超・高級賃貸」が描き出す東京の新たな階層構造


本調査が示唆するのは、東京23区の賃貸市場が、もはや単一の物差しでは測れない「二極化」のフェーズに入ったという事実だ。

富裕層のニーズに応えるべく、超高級賃貸は今後もさらなる高額化と高付加価値化を突き進むだろう。「家賃70万円」という数字は、単なる不動産統計ではない。

それは、世界都市・東京が突きつける、新たな経済格差の最前線と言える。


調査概要

抽出期間:2019年~2025年(2025年は1月~6月までの物件を対象)
対象物件:LIFULL HOME’Sに掲載された東京23区内の賃貸物件
シングル向け:ワンルーム、1K、1DK、1LDK、2K
ファミリー向き:2DK、2LDK、3K、3DK、3LDK~
調査主体:株式会社LIFULL(LIFULL HOME'S 不動産データソリューション)


【参考資料】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000732.000033058.html

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