A2:微妙な遅刻と大きな声…など若干のズレが気になった。
そして指定されたお店へ行き、少し早く着いたのでスマホをいじりながら待っていると、宏樹がやってきた。
「初めまして、宏樹です」
「初めまして、亜子です」
ただ、私たちの約束は19時半だったのに、微妙に遅刻をしてきた宏樹。
5分くらいの遅刻だったのでいいけれど、何にも連絡はなかった。
「待たせちゃいましたか?すみません」
「いえいえ、ちょっと早く仕事が終わっただけなので」
5分以上遅れるならば、さすがに彼も連絡をしてくるだろう。しかし3〜4分くらい遅れる場合、連絡をするか、しないか…。
そのあたりは、その人の人間性による。
ただ私だったら、もし仮に3分でも遅れるならば、ちゃんと連絡を入れる。相手に対しても失礼だと思うし、初デートに限っていうと、最低限のマナーの気もする。
― こんな細かいこと気にしていたら、キリがないよね。
そう思ったので、笑顔で一旦受け流し、デートを楽しむことにした。
しかしお互いにビールで乾杯を済まして話し始めたのだけれど、デート開始からすぐ、思わず一緒にいるのが少し恥ずかしくなるようなことが起こった。
まず、宏樹が予約してくれていたのは、カウンター席だった。それは良い。テーブル席で、初めて会うのにいきなり対面だと少し緊張するし、話しにくさもあるから。
でも問題は、宏樹のカウンター席での言動にあった。
「亜子さん、お綺麗ですね!アプリで見た時から、思っていたのですが」
「そんなそんな…」
「亜子さんは、どうしてマッチングアプリを使っているんですか?必要なさそうなのに…」
― ちょっと、声が大き過ぎませんか?
静かな和食のカウンター席で、“マッチングアプリで出会って今日が初対面”を連呼されるのは、少し恥ずかしい。
大将や周りの方にもあまり話を聞かれたくないし、「あ〜この人たち、今日が初デートなんだ」と、周囲の方の耳がこちらに向いているのが伝わってくる。
だから私は極力小声で話そうと試みる。けれども、宏樹はまったく気がついていない様子だ。
「亜子さん、ごめんなさい。何ておっしゃいましたか?」
「あ、声小さかったですか?カウンター席だし、他のお客様もいるので大きな声は迷惑かなと思って」
「そうですよね。さすがの気遣いです」
「いえいえ。で、何の話でしたっけ?」
「なんでマッチングアプリを使っているんですか?という質問でした。でも、話したくなければ、本当に大丈夫です」
「そうでしたね。私は周りもみんな使っているし、真剣に良い人を探したくて。宏樹さんは?」
ただ、彼に悪意はない。そもそもマッチングアプリ自体、今時主流の出会いだし、何も恥ずかしいことはない。
ただ、初デートだと周囲にバレバレなのが妙にくすぐったい。
「僕も同じです。真剣に、結婚できる相手を探しています」
「宏樹さんも、出会いとかありそうなのに」
「僕は周りがほぼ結婚していって、全然出会いがなくなりました。なのでアプリを使うことにしたんです。でも亜子さんのような素敵な方に会えて、嬉しいです」
それに、宏樹はいい人なんだと思う。優しいし、誠実だ。
のびのびと育ったお坊ちゃまなのか、周囲を疑うこともしなさそうだし、付き合ったらとても優しくて良い彼氏になると思う。
でも初デートの場所やお店が決まるまでの連絡の遅さと、デート中の認識のズレがとにかく気になった。
「宏樹さんって、いい人ですよね」
きっと彼の、この“微妙な認識のズレ”が気にならない人もいると思う。大きなことではないし、とても些細なことだから。
でも私からすると、少しでも遅れるなら、ちゃんと連絡をするとか、デートのお店は早めに決めておくとか…。
せっかちな性格ということもあるけれど、事前に色々と決めておきたいことがある。
「亜子さん、すごく楽しいです。初対面でこんなこと言うのもアレですが、また会えたら嬉しいなと思います」
「本当ですか?嬉しいです」
― いい人なんだけどな…。
そう思いながら、私は一旦、“彼とは次に進まない”という選択をした。
▶【Q】はこちら:マッチング後、2回目のデートがないワケ。男が初デートの時に気を付けるべきことは?
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男女の友情はあり得る?








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