日本の富裕層ピラミッドに、明確な「分岐点」が存在することが明らかになった。
博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)が発表した「新富裕層調査2025」によれば、世帯年収1,500万円以上の「インカムリッチ」層の中でも、世帯年収3,000万円を境に、資産保有状況や生活意識、さらには消費の「質」が劇的に変化するという。
いわゆる「高所得者」から、ストック(資産)とフロー(年収)の両輪を備えた「超インカムリッチ」へと昇華するボーダーライン。その実態をデータから紐解くと、現代日本における新たなエリート層の姿が浮かび上がってくる。
年収3,000万円を超えると、5割が「純金融資産1億円」を突破
まず注目すべきは、年収と資産の相関性。
調査によると、世帯年収3,000万円以上の世帯では、金融資産1億円以上のいわゆる「ウェルスリッチ(富裕層)」が51.6%と過半数に達する。
さらに世帯年収5,000万円以上ともなれば、金融資産5億円以上の「超富裕層」が50.7%を占める計算だ。
職業構成比を見ると、年収1,500万円クラスでは「会社経営者・役員」が8.8%に留まるのに対し、3,000万円以上では18.0%、5,000万円以上では20.9%と急増する。
彼らのキャリア意識は高く、特に年収3,000万円層では「自己成長志向」が約6割に達するなど、極めてハングリーな属性であることが伺える。
投資対象は「オルタナティブ」と「現物」へ
資産運用の手法も、年収の増加に比例して高度化している。
一般に浸透している株式やNISAは年収による差が少ないが、世帯年収3,000万円を超えると、アクティブファンドやREIT、さらには暗号資産といった「オルタナティブ資産」への投資率が顕著に高まる。
特筆すべきは、年収5,000万円以上の層で見られる「現物資産」への傾倒だ。
時計・宝飾品(23.5%)、金などの貴金属(21.0%)、アート(16.8%)といった資産を保有する割合が急拡大する。これは単なる趣味の領域を超え、インフレヘッジやポートフォリオの多角化を狙った戦略的な資産配置の一環といえるだろう。
「タイパ」の追求と、二極化する「家事・育児」の意識
ライフスタイルにおいても、彼らは徹底して合理性を発揮する。
「タイムパフォーマンス(タイパ)重視」の傾向は年収に比例して高まり、年収5,000万円以上では6割を超える。興味深いのは、家事・育児に対するスタンスの変化だ。
年収が高くなるほど「パートナーとの分担志向」は低下し、代わって「外部サービスの積極利用(外注志向)」が急速に高まる。
年収3,000万円を境に、家事や育児を「自らの労働力で解決すべきタスク」から「対価を払ってアウトソースすべき領域」へと定義し直していることが見て取れる。
「ストーリー」を買う。成熟した消費のゆくえ
教育面においても、年収3,000万円以上の層では「子育て・教育ファースト」の意識が強く、子供の海外留学志向も約4割に達するなど、次世代への投資には労を惜しまない。
こうした「超インカムリッチ」層の共感を得るための鍵は、機能性や価格合理性ではなく、その裏側にある「文化的意味性」にある。
調査では、彼らが「商品の背景にあるストーリー」や「文化・芸術による教養の深化」を極めて重視していることが示された。
経済的にも精神的にも成熟した彼らは、もはや単なる「贅沢」を求めてはいない。自らの美意識を充足させ、知的好奇心を刺激する「物語」に対して、相応の対価を支払う準備ができているのだ。
今回の調査結果への所見
今回の調査を通じて「世帯年収3,000万円」が所得富裕層(インカムリッチ)と資産富裕層(ウェルスリッチ)の両面を併せ持つ「超インカムリッチ」の分岐点であることが見えてきました。
世帯年収5,000万円以上では金融資産5億円以上の「超富裕層」が実に5割を占める結果となりました。
経済的余力は、ファミリー層であれば、家事や育児といったタスクの外部化や、より良い子育て・教育環境への投資につながっているようです。
また「文化」や「芸術」など、自分自身の感性や教養を高めることへの関心の高まりは、彼らの物性的・機能的な価値にとどまらない「ストーリー」を重視した消費とも密接に関わっているように感じます。
「超インカムリッチ」のような、経済的にも文化的にも成熟した新しい富裕層の共感を獲得するためには、物性的・機能的価値に加えて、「ストーリー」のエビデンスにもなるような、「モノづくり」全体に宿る文化的・芸術的な独自の価値、つまり「文化的意味性」が重要になってくるのではないでしょうか。(分析担当)
【調査概要】
〇調査名称:「新富裕層調査2025」
〇調査手法:インターネット調査
〇対象者:20~69歳の男女計3,512名
※今回の調査では「インカムリッチ」と「ウェルスリッチ」の境となる世帯年収等、インカムリッチの中でも「世帯年収」による特徴の分析を強化することを目的に高年収世帯の対象者を拡充。
※全体で3,521サンプルのうち、世帯年収1,500万円以上のインカムリッチ層を2,009サンプル、同3,000万円以上を609サンプル、同5,000万円以上を209サンプルを確保、実際の人口構成に基づきウェイトバック集計を実施した。
〇対象地域:全国
〇調査時期:2025年3月14日~25日
〇調査機関:QO株式会社
【参考資料】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001050.000008062.html













この記事へのコメント
都心にいると世帯年収1500万でも贅沢なんてできない。
3000万以上だと尖った経営者とかになってくるから、自己の成長よりも自分のエゴに振り切っていくイメージ。
自分がまわりに合わせるのではなく、まわりを自分に合わせさせるというか。笑