A2:“ホウレンソウ”ができないことに、愛想を尽かした
龍太は私が家事をしないことに対して、怒ったり何か言ったりするわけでもない。
「龍太くん、ごめんね」
「何で謝るの。若菜だって仕事頑張っているんだし。それに食事は、デリバリーで全然いいじゃん」
「そう言ってくれると助かる」
ただ、そこで私は違和感が生まれる。
― ん?そこは手伝うとか、自分もできる限りのことをするとか…ないの?
でも龍太は、朝早いし、会食も多いし夜も遅い。私が先に寝た日は、顔を合わせないまま1日が終わることもあった。
でもそれでも良かった。
ただ、そんななかでも自分なりに頑張って、龍太の会食がない日くらいは、せめてご飯だけは作ろうとした。しかし龍太は、私の気持ちを知ってか知らずか、何度か“食事のドタキャン”があった。
「ただいまぁ」
この日は、久しぶりに龍太が家でご飯を食べられる日だと言っていた。
だから仕事が遅くなってしまったけれど、帰りにスーパーへ寄り、張り切って彼のためにご飯を用意していた。
メニューは、彼の好きなもので揃えた。
しかし、そんな思いを彼はあっさりと打ち砕いた。
「あ、龍太くんお帰り。遅かったね。私もさっき帰ってきて急いで用意したから、ちょうど良かった。夜ご飯、食べるでしょ?」
「ごめん、今日は外で食べてきちゃって…」
「え〜また?先週末、今日はお家で食べるって龍太くん、言ってたじゃない」
「ごめん、すっかり忘れてた」
「もう。せっかく作ったのに…」
せめて朝に言うとか、前日に言うとか。たった一通のLINEを、どうして送れないのだろうか。
もし龍太がご飯を食べないなら、自分用にはもっと適当で良かったし、仕事終わりで疲れているなか、スーパーから重い荷物を下げて15分歩いて帰ったりしない。
それに、油はねを気にしながら料理もしなかった。
「しかもこれで何度目?」
さらに、これが初めてではなかった。もう何度言っても直らない龍太。
彼はレストランのドタキャンはしないのに、家ご飯に関して、どうしてこんなに軽視できるのだろう。
「でも龍太くん、作り置きは食べないもんね」
さらに面倒なのが、彼は“作りたて”しか食べないことだった。
「うん、そうだね」
「わかった、龍太くんの分は私が冷凍して明日以降で食べるから。ただせめて、ご飯を食べるのか、食べないのかの連絡くらいはして欲しいってこの前も言ったよね?」
「そう言われてもなぁ。事前に予定がある時はちゃんと伝えるようにするけど」
自分の努力がまったく報われず…むしろ空回りをしているような気がして、虚しくなっていく。
ただこの逆もあり、彼が突然帰ってくることもあった。
「ただいまぁ…お腹空いた〜」
「龍太くん、こんな直前に連絡もらっても、今日は帰りにスーパー寄ってないし、食材も何もないからご飯作れないよ?うどんとか、冷凍の鮭とかならあるけど…」
「気にしないで。適当にデリバリー頼むから。せっかくだし、最近食べられていなかった餃子とか頼んじゃおうかな」
そう言うと、目を輝かせながら嬉しそうにデリバリーアプリを開いた龍太。
「龍太くん、楽しそうだね」
「うん。たまに取るデリバリーって楽しくない?若菜も、何かいる?」
この姿を見て、愕然としてしまった。
― 私のご飯より、デリバリーの方が嬉しいんだ…。
そこで、私は決意した。
「もう、彼にご飯を作るのはやめよう」
無駄に期待をするから、失望するだけ。そしてご飯に関しては、作ったのに食べてもらえないほど悲しいことはない。頑張って作った料理より、デリバリーが好きなら勝手にすればいい。
そう思うと急にすべてが馬鹿らしくなってきて、私はふと家事をするのをやめてみた。
すると、急にすーーっと楽になった。
「あのさ、若菜。それって夫婦の役割放棄してない?」
もちろん、龍太は文句を言ってきた。
しかし冷静に考えて欲しい。お互い共働きで、私たちにはまだ子どももいない。掃除、洗濯、料理に細かい買い出しに、ゴミ捨てまで…これはバランスがおかしいし、料理を作っても食べない人に、提供する料理はない。
「夫婦の役割って、なに?お互い、そこは平等でしょ」
龍太には、申し訳ないという気持ちもある。他の人なら、もっとうまくやれるのかもしれない。
でも私は家事と仕事を両方器用にこなせるほどのバランスは持ち合わせていない。
もうしばらくしたら家事をアウトソーシングしつつ、私たち二人の最適解を見つけていきたいと思っているけれど、「その家事代行費は誰が出すのか」などでまた揉めそうだなと思っている。
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この記事へのコメント
そこは手伝うとか自分もできる限りのことをするとか…ないの? と違和感を抱えているだけでなく、食事も当番制にしたら良かったと思いますね。自分で作った料理が余ってもまさか廃棄する訳にもいかないし自分で冷凍するなりして食べるようになったでしょう。
で分担表でもこしらえて負担の軽い方が家事の代行費用を出すとか。(→ 必然的に夫) 😂