Q2:妻がすべてを放棄したくなった理由は?
まず、家が一気に汚くなった。洗濯物は溜まっていくし、食事はデリバリーが増えていく。
ただ、それでも構わなかったので、僕は何も言わなかった。そもそも、僕はあまり細かいことを気にしない性格なので、気がついた方が、時間がある方がやる…という僕らのスタンスに満足していた。
「龍太くん、ごめんね」
「何で謝るの。若菜だって仕事頑張っているんだし。それに食事は、デリバリーで全然いいじゃん」
「そう言ってくれると助かる」
僕は決して若菜を責めたりしていない。
また去年から僕の方も会食が増え、お互いに帰る時間が読めないことが増えた。家で食事をとることも少なくなってしまい、顔を合わせて話すのは寝る前くらいだ。
むしろ僕が遅くなると、会話をしないまま若菜が先に寝ていることもあった。
ただそれでも双方よかったし、若菜に至っては「夜ご飯作る手間が省けた」なんて言って喜んでいた。
しかしある日のこと。
「ただいまぁ」
玄関のドアを開けると、どこか懐かしい、“家庭的な香り”の代名詞のような、焦がし醤油のようないい香りがする。
「あ、龍太くんお帰り。遅かったね。私もさっき帰ってきて急いで用意したから、ちょうど良かった。夜ご飯、食べるでしょ?」
そう言う若菜の後ろにあるダイニングテーブルには、手料理が並んでいる。しかし最近お互い時間も読めないし、食事もバラバラなことが多かったので、今日は帰宅前に軽く食べて来てしまった。
「ごめん、今日は外で食べてきちゃって…」
「え〜また?先週末、今日はお家で食べるって龍太くん、言ってたじゃない」
「ごめん、すっかり忘れてた」
「もう。せっかく作ったのに…しかもこれで何度目?でも龍太くん、作り置きは食べないもんね」
僕は母親が出来立ての料理しか出さなかったため、どうも作り置きというものが苦手だった。それは若菜も、よく知っている。
「うん、そうだね」
「わかった、龍太くんの分は私が冷凍して明日以降で食べるから。ただせめて、ご飯を食べるのか、食べないのかの連絡くらいはして欲しいってこの前も言ったよね?」
「そう言われてもなぁ。事前に予定がある時はちゃんと伝えるようにするけど」
それから僕なりにトライはしてみたし、この件については何度も謝った。
それに、ご飯がない時も僕は怒ったりもしていない。
「ただいまぁ…お腹空いた〜」
その日は、会食が入っていたのだが先方の体調不良で、急遽キャンセルになってしまったのだ。
「龍太くん、こんな直前に連絡もらっても、今日は帰りにスーパー寄ってないし、食材も何もないからご飯作れないよ?うどんとか、冷凍の鮭とかならあるけど…」
「気にしないで。適当にデリバリー頼むから。せっかくだし、最近食べられていなかった餃子とか頼んじゃおうかな」
「龍太くん、楽しそうだね」
「うん。たまに取るデリバリーって楽しくない?若菜も、何かいる?」
「いや、私はいい」
「そっか」
若菜にとって、負担がないようにデリバリーを頼んだ。しかし、何かが気に食わなかったのだろうか。
この後、しばらくして家へ帰るとご飯が何も用意されなくなった。
「え?若菜、今日の晩御飯は…?」
「私、もう龍太くんにご飯作るのやめるから」
「え?」
この時もかなり衝撃的だった。
しかしそれから半年くらいすると、段々と洗濯物も溜まっていき、僕が洗濯やゴミ捨てなどの家事をするようになった。
「あのさ、若菜。それって夫婦の役割放棄してない?」
あまりにも限界だったので、一度言ってみたことがある。すると若菜はすごい形相で睨みつけてきた。
「夫婦の役割って、なに?お互い、そこは平等でしょ」
そしてしまいには、妻業をボイコットして家を空けて実家へ帰ってしまった若菜。
一体何が不満なのか、この先僕たち夫婦がお互い平和に楽しく暮らせる日は来るのだろうか…。
▶前回:一緒にスマホを見ていたとき、LINEの通知で見えたメッセージ。交際3年で知った、彼女の秘密とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:11月30日 日曜更新予定
妻が妻業を辞めた理由は?








この記事へのコメント
また、“作り置きは一切食べません男”
龍太がやってた家事は週末お風呂掃除、買い物、ゴミ出し、洗濯程度か? 役割分担を明確にしないと不満が募るばかりだと思うし。リモート解除になったタイミングとかで普通は相談するけどなぁ。