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TOUGH COOKIES Vol.40

「元カノと一緒に仕事することになった」彼に告げられた28歳女の、複雑な胸の内

SUMI

付き合いだしてからの大輝は、その恋愛体質ぶりを遺憾なく発揮している。できる限り一緒にいたいと、日々のスケジュールの中心はともみで、大輝が大切に思っている人たちにも彼女だと紹介された。

大輝が兄や姉のように慕う、BAR・Sneetの常連客である雄大や愛、そして唯一の親友だと会わせてもらったのが同級生の勇太だった。大学までずっと強豪柔道部のエースだったという、縦にも横にも大きなマッチョ体型(180cm、100kg超)の彼が、ともみに会うなり、突然泣き始めたから驚いた。


「こいつ、ずっと報われない恋愛ばっかりしてきたから……大輝、ほんっっとに良かったなぁ、今度こそ両想いになれて。しかもこんなにかわいい子と…良かったぁ~、マジで良かったなぁ」



うれし泣きで号泣する人(しかもいかつい大男)を見たのは初めてで、面食らってしまったともみの横で、やめろよと顔をしかめた大輝もどこか満更ではなさそうで、2人の絆の純粋さが微笑ましく、羨ましくなった。



今度、父親にも紹介すると言われている。大輝が大切にしている人はそう多くはないけれど、その1人1人に、“オレの大好きな彼女”だと紹介される度に、あなたも“大切な人”の中の1人なんだよ、と言われてるようで、大輝の恋人になれた実感を持つことができていた。だから。



「連続ドラマの脚本の共同執筆の話が来てるんだ。ただ、もう一人の作家がキョウコさんで。ともみがイヤなら断る。だからどう感じているのか、ごまかさずに本音で教えてくれる?」


夕食を食べにでかけた白金のビストロで、大輝にそう切り出されたとき、ともみは、面白そうな仕事だと感じているのなら受けるべきだと即答できた。

ともみは、キョウコが大輝に別れを告げた本当の理由を、キョウコとの約束を守り、大輝に話していない。伝えないのはフェアではない気もして悩まなかったといえばウソになるけれど、わざわざ伝えるということは、大輝の自分への愛情を試すような行為になると思ったからだ。

― 大輝を試す必要なんか、ない。

疑い深く臆病な自分が、そんなことを思える日が来るなんて。ともみは、毎日フワフワと浮かれてしまっている自覚がある。

お湯が沸いた音に、知らず知らず緩んでいた口元を引き締めながら火を止めたとき、ゆったりとした足音が近づいてきた。時計を見ると11時少し前。打ち合わせに遅れずに済んだと微笑みながら、おはようと振り返る。



「う~…行きたくない。むしろ、ともみも連れて行きたいな」

まだ目覚めきれていない掠れた声に後ろから抱きしめられたまま、むしろ、っておかしくない?と見上げたともみの唇に、優しいキスが落ち…やがてそれは深いものになった。

この記事へのコメント

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No Name
そっか前に監督と大輝が話してたのはこの件だったのね。   大輝はもうともみに夢中って感じだしすごくいい作品になるね....そして実際に観たい!
2025/11/25 05:1616Comment Icon1
No Name
崇は、キョウコが好きだった人が大輝だとは知らないんだったか....
でも、大輝の吹っ切れた感じから焼けぼっくりに・・・はあり得ないと言うかこの二人が離婚を止めるケースも考えられるか?ルビーやメグの件含めて続きを早く読みたい。
2025/11/25 06:1615
No Name
友坂ともみになる日も近そうね。良かった良かった。
いずれ産休育休を取るともみに代わってルビーがお店を任されるバージョンも読んでみたいです。
2025/11/25 06:2914
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TOUGH COOKIES

SUMI

港区・西麻布で密かにウワサになっているBARがある。
その名も“TOUGH COOKIES(タフクッキーズ)”。

女性客しか入れず、看板もない、アクセス方法も明かされていないナゾ多き店だが

その店にたどり着くことができた女性は、“人生を変えることができる”のだという。

心が壊れてしまいそうな夜。
踏み出す勇気が欲しい夜。

そんな夜には、ぜひ
BAR TOUGH COOKIESへ。

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