Q2:デート中にやってはいけない女の言動とは?
1ヶ月後、二度目のデートがやってきた。今回も孝之が、西麻布にあるお店を予約してくれた。
「今日もお店を選んでくださり、ありがとうございます」
会うと同時に、お礼は忘れない。これはどんな相手に対しても、私が気をつけていることだった。
「いえいえ。今日は少し雰囲気を変えて、カジュアルな和食にしてみました」
たしかに、前回のラグジュアリーな雰囲気と今日のお店は、少し違う。いや、全然違う。「アットホームで、ほっこりしている」と言えばしっくりくるだろうか。
煌びやかではないし、むしろちょっと薄暗くて、カウンター席に座っているのは常連さんばかり。その常連さんの焼酎のボトルが壁一面に並んでいるのはまるで地元の居酒屋だ。
女将さんも気難しそうで、ぶっきらぼう…。
― ここでデートって、どう対応するのが正解なんだろう?
そう思ったものの、料理を食べるとその味に感動してしまった。さすがは西麻布にあるお店だ。
「…美味しい!」
「でしょ?外観はちょっとイメージと違うかもしれないけれど、本当に美味しくて。お気に入りの店なんですよ」
「そうだったんですね。さすが孝之さん、グルメですね」
「良かった、喜んでもらえて」
初デートでも思ったことだけれど、孝之は今日も穏やかだ。
「孝之さんって、優しいですよね」
「そうですか?」
「優しいってよく言われません?」
「どうだろう…下に妹がいるからかな。女性には優しくするものだと、親から教えられてきたので」
「孝之さんに妹さんがいること、わかる気がします」
兄弟構成がすべてではないけれど、孝之はどこか“お兄ちゃん”感が溢れている。だから妹がいると聞いて、納得してしまった。
「孝之さんに会うと、安心するというか、何というか…。つい相談したりしたくなっちゃうんですよね」
「たしかに、頼るより頼られる場面の方が多いなぁ。美沙ちゃんは?ご兄弟は?」
「私は末っ子です」
「あ〜何となくわかるかも」
「そうですか?」
今日はカウンター席で、二人で並んでビールを飲みながら思わず笑い合う。
「血液型の話とか、日本人は好きだよね」
「わかります。みんな聞きますよね」
くだらないことだとはわかっている。でもひとしきり血液型の話もして、二人で盛り上がった。
そしてそろそろ食事が終わりそうだったので、一応前回の話の報告をしておくことにした。
「そういえば、この前孝之さんに相談をさせて頂いた仕事の話なんですけど、あれから続きがあって」
「ほう。どうなったの?」
「同期がたくさん辞めていくって言ったじゃないですか。だから私も、転職しようかなと思っているんです」
「挑戦するのは良いことだからね。ちなみに何系に転職するの?」
「保険の仕事は好きなのですが、外資系の保険会社へ行くか。それか、まったく別の職種へチャレンジするかで悩んでいます」
「美沙ちゃんならどこでも活躍できそうだけどね」
何かをするにも応援してくれて、背中を押してくれる孝之。優しいし、人柄も良いし、一緒にいるととても安心する。
それが本当に嬉しくて、私はお店を出たあと、自分の気持ちをまっすぐ伝えてみた。
「孝之さんと一緒にいると、そのお人柄に包まれているようで安心します」
「そう言ってくれてありがとう。またご飯行こうね」
「はい!」
こうして、次回の約束をやんわりしてから解散した私たち。家に帰ってからも、私の心はふわふわとしていた。
前回も、今日のデートも完璧だったから、次のデートもあるものだと思っていた。
しかし、孝之からの連絡は途絶えてしまった。果たして、私の何がダメだったのだろうか…。
▶前回:結婚前提の同棲だったのに、わずか9ヶ月で破綻。女が許せなかった些細なコトとは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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デート中に男が考えていたこととは?
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