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男と女の答えあわせ【A】 Vol.286

アプリで出会った彼女と3回目のデート。行きつけの三茶の和食店に連れて行ったら、女の態度が急変したワケ

三浦マキ

A2:デート中にスマホでゲームはありえない。


二度目のデートも盛り上がり、私は幸せな気持ちに包まれていた。

― 達也さん、とっても素敵な人だな…。

そんなことを思いながら、迎えた三度目のデート。やはり三度目となると、何かが動くに違いない。

そんなデートの鉄則を考えながら、私は気合を入れ、達也が行きつけだという三茶にある和食屋さんへと向かう。

行きつけのお店へ連れて行ってくれるという時点で、「真剣に考えてくれている」ということだろう。

その気持ちも嬉しくて、失礼のないようにと気をつけながらお店の扉を開けた。そしてカウンター席に座った私たち。早速達也が店主の方を紹介してくれて、私は頭を下げる。

「こちら、美香さんです。こちら、店主の大輔さん」
「どうも、いらっしゃい」

お店も店主の方も雰囲気が良く、「いいお店ですね」なんて話で盛り上がっていた。

しかし二人で乾杯し、少し料理が進み始めた時、常連の人がやってきた。


「あれ?達也じゃん。何やってんの」

達也とも顔見知りらしく、早速その男性は達也をいじっている。しかし達也も満更でもなさそうで、嬉しそうにその人の茶化しを振り払う。

「いや、見てわかるでしょ(笑)デートですよ」
「へーいいなぁ」

そんな二人の会話を、最初は微笑ましく見ていた。しかし達也は立ち上がり、ビールグラスを持ったまま、その人と立ち話を始めてしまった。

「達也さん、本当に常連なんだね」

そう言うとようやく気がついたのか、慌てて私に詫びてきた達也。

「ごめんね、ほったらかしにして。ここの常連たち、みんな仲良くて」
「そうなんだ。楽しそうで何より」

しかしそう言っても、まだ達也は戻ってこない。

結局手持ち無沙汰になった私は、仕方なくスマホを見る。溜まっていた返信をし、適当にSNSを見ていても、まだ達也は席に戻ってこない。

― デート中の立ち話、長くない?

そう思っていると、ようやく戻ってきた達也。しかし私は、次の達也の行動に思わず二度見してしまった。

「ごめんね」とか「お待たせ」とかもなく、席へ戻ってきたかと思えば、まさかのスマホでゲームを始めたからだ。


― 嘘でしょ?このタイミングでゲームする…?そもそも、デート中にそんなスマホ見る?

男の子だから、ゲームもしたいだろう。ログインしなければならないタイミングだったのかもしれない。それに緊急の連絡が入っていたのかもしれない。

でも今日は、まだ三度目のデート。しかも先ほどまで私のことを放置していた挙句、私には一言もない。さらに堂々とゲームを始め、黙ったままビールを飲んでいる達也のことを、まじまじと見つめてしまった。

「あ…達也さん、飲み物がないみたいなんだけど、何飲む?」
「あぁ、じゃあビールで。ありがと」

そう言ってもまだ、スマホから顔も上げずにゲームを続けている。それを見て、私はむしろショックを受けた。

せめて「ごめん」とか、もしくは仕事ならば「仕事のメールだけ打ってもいい?」とか。言えることはたくさんある。

「達也さん、ゲーム終わった?」
「今ちょうど良い感じ。美香ちゃんは?終わった?」
「私は終わるも何も、ただ達也さんを待っていただけだから」
「そっかそっか」

そして私がさらに驚いたのは、達也の三度目のデートでの豹変っぷりだった。

「で、なんだっけ?」
「何が?」
「何の話をしていた?僕たち」
「んー…特に何も?」
「そっか。じゃあいっか」

そう言ったきり、黙りこくった達也。

― え?このデート、楽しくないの?

そう感じ取れるほど、達也の態度はまるで別人。「多重人格者なの?」と思うほど違う。

「達也さんって、意外に静かなんだね」
「無駄に話すのが嫌いで。だからこうやって、静かに食事ができるの、助かる」

そんなことを言われたら、もう何も言えない。無駄に話すこともできないし、ただひたすら私は黙って食事をするしかなくなってしまう。

でも、最初からこういった態度ならまだわかる。しかしどうしてこの三度目で突然変わったのだろうか。

そう思っていたけれど、食事の途中で気がついた。

きっとこれが、彼の本当の姿だ。

しかも明らかに私が戸惑っている状況で、達也は当然のようにこう言ってきた。

「飲み足りないから、もう1軒行こうよ」

最初の二回は、頑張って無理をしていた。でも本来の彼は食事中にスマホでゲームもするし、ほぼ喋らないし、気も回らない。

自分の軸でしか見ていない。二回目までは、多少私によく見られようと頑張っていたのだろう。ただこれが、彼の真実の姿だ。

― こんな人とこれから交際するのはちょっとキツイな…。

そう思い、私はこのデート限りで達也と付き合うのはやめにした。

そして何より。“付き合うまでに三回はデートする”という本当の意味が、今回で分かった気がする。


▶【Q】はこちら:デートで女性が2軒目を断るとき。アプリで出会った彼女と3回目デートで男がやらかしたこととは

▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

▶NEXT:9月27日 土曜更新予定
男が可愛い女を本命にしなかった理由は?

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この記事へのコメント

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No Name
「で、なんだっけ?」
「何が?」
「何の話をしていた?僕たち」
「んー…特に何も?」
で黙りこみ、帰り際2軒目行こうよって、コントか何かかなww
2025/09/21 05:2124Comment Icon2
No Name
達也は思考回路がおかしい。 普通なら常連(橋本)との話はさっと上手く切り上げて席に戻るなり「ごめんねー、ホント申し訳ない」と声かけるしそこから普通に会話を楽しむけれど、達也はスマホ見てる美香に気を遣い黙って自分もスマホでゲーム始めた。だから何か失礼な事したなんて全く思ってない。ゆえに「美香ちゃん終わった?」とかトンチンカンな発言すら出てくる。 今回美香側に主だったNG行動は無かったけれど、安易に多重人格者との精神疾患を疑った所にはドン引き通り越して呆れた。
2025/09/21 05:1919Comment Icon2
No Name
「多重人格 かなり昔の呼び方で、今は解離性同一障害。耐え難い記憶とか幼少期の心的外傷から自分の心を守るために引き起こされる障害。複数の人格が同一人物の中に、コントロールされた状態で現れる。 美香はよく知りもせずに軽々と言ってるようで、今回もクソ女認定! ※達也が過去の心的外傷と戦っていないのであれば勿論アホ過ぎてお話にならないが
2025/09/21 05:3511Comment Icon4
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男と女の答えあわせ【A】

三浦マキ

男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

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