A2:自分のことが大好きなのが溢れていて、引いた。
澪との初デートは、西麻布にある焼き鳥にした。「少し場所が分かりにくいかな?」とは思っていたが、澪はしっかり10分遅刻してきた。
「ごめんなさい、道が混んでいて」
「大丈夫ですよ。何飲まれますか?」
「まずはシャンパン貰おうかな…」
遅れてきたのは謝ってもらったのでいい。それに事前に連絡も来ていた。
しかし最初に「ん?」と思ったのは、澪がこの後、店員さんにオーダーする時のことだった。
「シャンパンひとつ」
すごく細かいと思うけれど、店員さんに対してタメ語を使うのはどうなのだろうか。
― いや、別にうっかり使ってしまっただけかもだしな…。それに、「ビールひとつ」とか「ビール一杯」とかは普通に言うか。
そんなことを考えるのは良くないと思い、僕は違う話題を振ってみる。
「澪さんは、何のお仕事をされているんですか?」
「私はIT関連です」
「高橋さんとは、よく飲むんですか?」
「はい、飲み仲間で。なんか昔から、可愛がってもらっていて」
そんな世間話をしていると、急に澪が切り込んできた。
「裕太さんってどういう人が好きですか?」
「一緒に頑張れる人がいいな、とは思います。澪さんは、どういう人がタイプですか?」
「私は、優しい人が好きです。欲を言えば、自分より稼いでいる人がいいな…くらいです♡」
そもそも、最初に澪に会った時にいた高橋さんの周りは、いつも澪のような、“何をしているかわからないけれど可愛くて綺麗な女性”がたくさんいる。
港区女子とはまた違う。それぞれちゃんと仕事はしていそうなのだが、なんとも言えない玄人感がある。
そう思ったので、前回澪と一緒にいた女性のことを聞いてみた。
「ちなみに、もう一人いた女性は?僕、全く話していなくて顔も覚えていないんですけど」
“類は友を呼ぶ”という諺の通り、友達を見ればなんとなくわかると思ったから。しかしそんな軽い気持ちで僕は聞いたのに、澪は急に不機嫌そうな顔になった。
「あぁ。晴香ですか?後輩で」
― え。冷たくない??
本当は仲が悪いのだろうか。もしかして、聞いてはいけない間柄だったのだろうか…。「これ以上深掘りするな」といわんばかりの態度に戸惑っていると、澪は2軒目を提案してきた。
「ちなみに、この後どうします?裕太さん、もし時間あればもう1軒どうですか?」
「いいですよ」
この時に、気がついた。澪は“自分中心”でないと嫌なのだろう。だから他の女性の話をされるのが、たまらなく嫌なのかもしれない。
そして僕が「この子はないな」と思った、決定的な出来事が起こった。
それは、2軒目へ行く際にタクシーへ乗り込んだ時だった。
道も知らず、運転も決して上手とは言えない運転手さんに当たってしまった僕たち。
「すみません、新人なので」
僕も、こう言われて困る時もある。僕自身が道がわからなくて乗った時なんて、絶望的な気持ちになる。
でも知らないものは仕方ない。そう思って道案内をしていると、明らかに澪は不機嫌そうな顔をタクシーの運転手さんに向けている。
そして急に、「気分が悪い」と言い始めた。
「ごめんなさい、ちょっと運転がダメで気持ち悪くなったかも…降りてもいいですか?」
「えぇ!澪さん大丈夫ですか?」
もちろん、心配だ。でもタクシーの運転手さんに対する横柄な態度を見て、僕はびっくりしてしまった。
結局、目的地の手前で降りることになった僕たち。
「大丈夫ですか?」
心配と戸惑いが混在していると、澪はまたすごいことを言っている。
「大丈夫です。あのタクシーの運転手さんのせいなので。むしろ裕太さんは大丈夫ですか?」
― この人、気に入られたい人以外への態度が横柄すぎるな…。
相手を見下しているし、とても偉そうだ。
僕は、人によって態度を変える女性が好きではない。尊敬できないし、人としてダメだと思う。
「僕は大丈夫ですが、無理しないで下さいね」
「私、人より三半規管が弱くて…」
体調が悪くなったのは可哀想だと思うし、三半規管が弱いならば仕方のないことだ。
でも周囲に対する態度を見て、澪の本当の人間性が見えた気がする。
結局この後もう1軒行ったものの、僕はまったく惹かれず、一度きりになってしまった。
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男が結婚を決める女性の特徴とは?
この記事へのコメント
と書かれているけど内容が伴ってない😂
澪はクンクンしながら気に入られようとヨイショしてただけ。この案件(裕太) は大いなる成長株だからたとえ彼女がいようが逃すまいと必死で連絡先を交換した。 自立云々関係有った?
気になるよ。丁寧に言えないのかと。あとボトルorグラス? 誘ったのは澪でも彼が選んで予約したお店であれば彼がホストなので澪がしゃしゃり出て注文しなくてもいい。
タクシーも、「運転がダメで気持ち悪くなったので降りる」は失礼過ぎる。