出勤してしまえば、思考は完全に仕事モードに切り替わる。
オフィスに入るとすぐ、部署内の朝会が始まった。
私のチームは、30〜40代の女性向け医療・がん保険の新商品や、既存商品のリブランディング、販売戦略の設計を担当している。
「吉村さん、午後イチのミーティング、会議室C押さえてあります。クライアントは予定通り1時に来社されます」
声をかけてきたのは、中途で入ったばかりの後輩。私は軽く頷いて、すぐに今日のアジェンダに目を通した。
「ありがとう。プレゼン資料、シナリオ通りに進められるように一度読み直しておいてね」
「わかりました!」
私は「よろしくね」と言いながら、社内用チャットで関係部署へ資料の追加リクエストを送ると、「週次の競合リリース情報」が届いていた。ライバル会社が昨日発表した新プランに、思わず釘付けになる。
「オンライン申込時の健康診断書の提出を省略し、代わりにアプリ経由の健康管理データを参照するという新しい仕組みを…」
思わず読み上げてしまう。これらはまさに、私たちのチームが次に狙っている領域だ。
「…先を越されちゃったかぁ」思わずつぶやいてしまう。
すると、「…むら。よしむら、眉間」と後ろから声をかけられたので、慌ててモニターから顔を離す。
「あ、成瀬さん。おつかれさまです。またシワ寄ってました?」
私が眉間を手で押さえながら言うと、成瀬は笑いながら頷いた。
成瀬 学。私の1つ上の先輩で、今年の春に私が所属している商品開発部に異動してきた。
「あんまり頑張りすぎるなよ。後輩を上手く使うのも俺らの仕事だからな」
私は「ですね」と相槌を打つと成瀬は「コレあげる」とチョコレート菓子を私のデスクに置いて、立ち去ってしまった。
成瀬は、確か5年くらい前に社内結婚をした。
相手は当時美女すぎると噂になった新入社員で、その美女がすぐに退社になり、成瀬は人事部から結構な嫌味を言われていた記憶がある。
私は社内のホットトピックには全く関心がなかったが、それでも噂が耳に入ってきたのは、成瀬も女性社員から人気があったからなのだろう。
― まぁ、よく見たら…かっこいいのかな。
ランチに行く時間も取れなさそうなので、もらったチョコに感謝をして、モニターに視線を戻した。
この記事へのコメント
何も食べてないと思いお惣菜買って帰ったら素麺食べてるのかよ vs せっかく俺が素麺を茹でて二人で食べてたのにわざわざ酸化した油の臭いするから揚げ出すなよ
仕事と嘘ついて家出てきてほろ酔いで帰宅したら疑われそうだけど...
余計な描写が多いし、文章も何故だかとても読み疲れる。