A1:言葉遣いがキツく、子どもに対しても酷い。
裕二とは、食事会で知り合った。友人に誘われて行った会で出会い、意気投合しすぐに交際に発展した。
身長は高いけれど線が細い印象だった裕二。交際後にわかったことだけれど、実際に裕二は食に細かい。
しかしこれは本人の生きてきた過去も含めての問題だし、私がとやかく言って直ることでもない。だから最初は気にしていなかった。
それに食の趣味自体は合うし、週末など一緒にいる時は楽しかった。
でも交際当初から、少し気になる点はもちろんあった。
週末、昼下がりから散歩しつつ、どこか美味しいお店でランチをする…というデートが多かったけれど、裕二はとにかく食にうるさかった。
例えばイタリアンでパスタを食べていた時のこと。
「ここのお店、美味しいね」
私が美味しく食事をしている目の前で、裕二はじっとパスタを見つめている。
「うん。でももう少しアルデンテがいいな」
― うるさいな…。シェフがせっかく作ってくれたんだから、黙って食べればいいのに。
作ってくれた人への感謝はないのだろうか。これはお店に限らず、私がご飯を作った時も小言が多かった。
「まぁそうかも…でもいいじゃん、美味しいんだから」
「結衣は能天気でいいね〜」
「能天気は、才能だから」
たまに裕二の中に棲みついている“小姑”が出てくる。
私に余裕があるときはいいけれど、私だって虫のいどころが悪いときもある。
そういうときに、裕二の小言を聞くのはしんどかった。
そして裕二は仕事で疲れていると、それをしっかり“家に持ち帰る”人だった。
「裕二ってさ、平日と土日でテンションが全然違うよね」
「まぁ平日は気が張っているからね…」
週末はまだ良いのだけれど、平日は、一緒にいるときにピリついていることが時々ある。食事をしながら話しかけようとすると、かなりキツイ口調で会話を遮断されることがしばしばあった。
「ねぇ裕二…」
「なに?ごめん、疲れているから後でいい?」
「そうだよね、ごめんごめん」
― せっかくご飯作ったのに…。これじゃ食事が、楽しくなくなるじゃん。
会話を冷たく遮られ、私は何も味がしなくなる。疲れて帰ってくる裕二のために、色々と考えて作った料理の数々。
ダイニングテーブルの上に頑張って並べたそれらの料理が、色褪せて見えて、なんだか泣きたくなった。
でも仕事が忙しいなら、仕方ない。普段大きなお金を動かしているし、プレッシャーもあるのだろう。そう自分に言い聞かせながら、ぐっと我慢した。
ただ裕二のキツイ言い方は、私に対してだけではなかった。週末に一緒に温泉へ行くことになったのだけれど、その時たまたま、隣の部屋に子どもがいて、はしゃいでいる声が聞こえてきたのだ。
たしかに、私も「こんな高級宿に子どもが来るんだ」と驚いた。
でも元気でいることは、子どもの仕事でもある。だから気にしないようにしたけれど、裕二は顔をしかめている。
「結衣、隣やばくない?子どもがいるんだけど」
「本当だね。すごいね、小さい頃からこんな素敵な宿に来られるなんて」
「あいつら、うるさ…マジでハズレだわ」
― あいつら…??
子どもに対して、“あいつら”とか“ハズレ”とか。そんなことを言う裕二の言葉に、思わず耳を疑ってしまった。
「窓閉めたら大丈夫じゃない?」
「そうかな」
そしてこの発言で、裕二が子ども嫌いなことがよくわかった。そして些細なことでもイラつきやすい、短気な性格が露呈したと思う。
普段、私に対してだけならばまだ我慢できる。でも子どもができたら、どうなるのだろうか。子どもに対しても、こんな冷たい態度を取るのだろうか。
そう考えると、裕二との将来が一気に不安になってきた。
そして決定打となったのが、裕二の母親に会った時だった。
この記事へのコメント
例えば、「線が細い印象だった裕二。交際後にわかったけど実際に裕二は食に細かい」実際にと言うなら割と少食だったとかでしょう。男性に対して線が細いと言うのは、ひょろっとしてて頼りないとか華奢で鍛えてない弱々しい印象、繊細で気が小さいそうとかで、直接的に「食にこまかい人」とまでは結びつかない。
昨日から言われてる「長崎になります」も強烈。
出た、下手くそ。