Q2:女が別れを決意した理由は?
たまたま母親が横浜から東京へ遊びに来る際にタイミングが被り、どうせなら…ということで、結衣と三人で、汐留にあるラグジュアリーホテルで会うことにした。
「どうしよう、手土産とか何がいい?服装は?」
慌てる結衣を、僕は優しく諭す。
「大丈夫だよ。手土産もいらないし、服装も適当でいいよ」
「そんなこと言われても…それはだめでしょ」
結局結衣は赤坂にある老舗の和菓子屋へ行って手土産を買ってきたようで、服装もシンプルなネイビーのワンピースを着てきた。
「結衣、さすがにちょっと地味過ぎない?」
「これくらいでいいでしょ」
「うーん。もう少し華やかなほうがいいと思うけど」
そんな話をしているうちに、店の前に着いた。大きく深呼吸をし、店へ入る。そして既に着いていた母に会うと、結衣はさらに緊張しているようだ。
「初めまして、土田結衣です」
「初めまして、裕二の母です」
この日は一緒にモダンフレンチでランチをしたのだけれど、結衣は適度に相槌を打ちながら、母の話を聞いてくれていた。
「結衣さん、ご出身は?」
「私は長崎になります」
「ご両親は、今も長崎に?大学はどちら?」
「はい、両親は長崎にいて、大学は都内の四大を出ています」
「お仕事は?」
「仕事は現在、出版社に勤務しています」
そんなやり取りを聞きながら、僕は母の嬉しそうな顔を見て思わず微笑ましく見つめてしまった。
結局ランチを終え、その後カフェに移動してお茶をしてから解散となった僕たち。解散後、結衣は大きくため息をついた。
「ふぅ…。私、大丈夫だった?」
「うん、完璧だった」
「良かった」
この時僕は、確信した。「結婚するなら結衣だな」と。
◆
そしてここから1ヶ月。平和な毎日が過ぎていき、すべて順調なはずだった。だが、完璧に見えた日々は、ほんの些細な違和感から崩れていった。
家で食事をした後、結衣がキッチンで食洗機に食器を入れてくれている時に、僕はふと思った。
「そういえば、結衣って子ども欲しいの?」
「え?どうしたの、急に。もちろん欲しいけど」
「そっか、なら良かった」
僕にとっては、ただの質問だった。でも今から思うと、あの時の結衣は笑っていなかったのかもしれない。
そしてしばらくしてからのこと。「話がある」といって結衣が僕の家に来た。しかし、信じられないくらい他人行儀の結衣がいる。
「私、裕二と結婚することが想像できなくて。でも、私は結婚がしたい。だから、もう別れよう」
「嘘だろ?なんで?」
「うまく言葉にできないんだけど…結婚が考えられないから、別れて欲しい」
そう言って、彼女は首を横に振った。
「待って、結衣」
「ごめんね。今までありがとう」
そう言って、結衣は僕が掴んだ手を静かに解き放った。
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男が女に振られた理由は?
この記事へのコメント
嫌過ぎる。