2025.03.27
TOUGH COOKIES Vol.6「私も芸能界に長い間いて、いろんな経営者の方を見てきたから…みず穂さんのお母さまは、きっと先を見通すことのできる優秀な方だったんだろうなと感じます」
「…なぜ母の話を?」
みず穂の問いに、少しだけ聞いて欲しいとともみがほほ笑む。
「お母さまは社長として、ご自身の命が尽きる前にみず穂さんの将来を任せる一番適した場所を探そうとした。
そしてこのまま洋子さんが側にいても、みず穂さんの能力を伸ばすことができないと判断した。同時にみず穂さんの洋子さんへの信頼の強さもわかっていた。自分がいなくなれば、みず穂さんはさらに洋子さんだけを頼るようになってしまう。
お母さまはそれを避けたくて、だから強引に洋子さんを切り捨てたんじゃないでしょうか。
洋子さんが長年の功労者であっても、みず穂さんの才能をこれ以上伸ばすことはできない。洋子さんのマネージャーとしての能力が頭打ちだと感じていた。だから2人を離すことにした。
そして洋子さんも自分と同じ気持ちでいてくれると思っていたはずです。“役者・東条みず穂”の将来を本気で思うなら、理解してくれるはずだと。
自分が切り捨てられることを許してくれると。でも」
「……でも…?」
みず穂は自分の中から、ずっと蓋をしてきた何かを引き出されている様な、不快さを感じ始めた。気づいていながら、見ないふりをして押し殺してきた何かを。
「洋子さんは不満だったでしょう。結局お母さまの言う通りにせざるを得なかったのかもしれませんが、表面上は円満に見えても恨んでいても仕方がなかった。
洋子さんにとってみず穂さんは自分が作り上げた誇らしい作品だったから、奪われることが耐えられなかった。
みず穂さんの将来に自分がいないなんて許せない。だから自分の能力の限界には気づかないふりをしたし、みず穂さんの将来のために良い道をという発想にはならかった。
それって自分の理想を押し付け続ける親と一緒で、愛じゃなくて執着とか独占欲ですよね。
私が一番の理解者だと自負するマネージャーさんたちの思いが歪になってダメになったタレントさんを、私は何度もみてきたので…わかる気がします」
じわっと汗がにじんだ手のひらをごまかすように、みず穂はぎゅっと手を握りしめた。思い出されたからだ。みず穂の仕事が減り始めた時の母と洋子のやりとりを。
母はみず穂が変わるべき時がきているから今までと同じではダメだと言った。けれど洋子はみず穂の良さを世間がわかっていないせいだから、彼女が変わる必要はないと言った。
結果的には母が、受けるオーディションの役柄や、レッスンの先生を変えたことにより、新しいイメージを手に入れることができた。厳しく辛いことをいうのはいつも母で、みず穂は今のままでいいと優しかったのは洋子だと思ってきたけれど。
「誰がみず穂さんのことを本当に思っていたのか。そう考えると…みず穂さんの洋子さんへの思いはなんだったのでしょうね?
幼かった時のことはともかく、みず穂さんが鍵アカでとろうとしていたコミュニケーションは私には信頼というより…依存に感じます。古き慣れあいって楽ですから」
みず穂は何も返すことができなかった。
「不安だってなんだって、本来なら今の事務所の人に相談するべきことですよね?そういう意味ではみず穂さんも、過去の後悔に囚われて今の周囲の人達との関係をきちんと築くことが後ろめたかったのでは?
洋子さんを切り捨てた意識がどこかにあって、その罪悪感で」
「…罪悪感」
呟いたのはみず穂ではなくルビーだった。
「ここまでのことは、全て憶測です。私が芸能界で見てきた事例に当てはめてみたんですが、本当はどうだったのかなんて確かめる術はありません。でも1つだけまぎれもない事実があります。それは」
ともみはさらに真っすぐに、みず穂を見据えて言った。
「所詮、金で売られるような関係だったってことです。洋子さんとみず穂さんの関係は」
「…ともみさん、言い方…」
ルビーが制したけれど、ともみは淡々と構う様子はない。
「捨てられた恨みをはらそうとしたのか、ただ金が必要だったのか、または両方だったのかはわからないです。でも売られた。…でも本当にいいんですか?」
「…なにが、でしょう」
「そんなことのために芝居を捨てても。というか本当に捨てられます?」
みず穂が、何を言ってるんだと言わんばかりに目を見開いた。
本当にその通りですね。すごいボリュームで読み応えもすごかったけれど、この連載では珍しく脱字(入力ミス) が目立っていて残念でした。多分、作者と入力する人は別だと思うけど、人気連載なので読み返すなどして防いて欲しいです。
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