かわいく生きられない女たち Vol.10

「あの人だって結婚してるのに、私は…」他人の薬指の指輪を見て落ち込む、28歳ワセジョの憂鬱

― まったく。いつまでたっても、高校生のノリが抜けないんだから…。

みんないい大学を出て、いい企業に入って、未来が約束されている。私だって努力してここまで来た。給与だって、立場だって男性と対等だ。

それは名誉なことだけど、女としても見てもらいたいというのは、矛盾しているのだろうか。

「で、一ノ瀬はどうなんだ?」

一ノ瀬、という言葉に私の意識は、急に彼らの会話へ向く。

「僕ですか?うーん。紗季ちゃんですかねー」

― なぁんだ。そういうことか…。

あの夜は、一ノ瀬にとってはなかったことになっているのだろう。



21時前。

週の真ん中ということもあり、早めに解散となる。二次会に流れるメンバーもいたが、私は帰ることにした。


目黒線に乗り込むと、運良く座れた。

― それにしても、一ノ瀬にとって私はなんなんだろう。

職場で毎日顔を合わすが、動揺しているのは私だけのように、彼はいつもクールだ。

― 私だけが忘れられないのかな。

都心の目まぐるしい日常の中で、彼はあの夜のことなんて、ちっとも思い出さないに違いない。

モヤモヤしてまっすぐ帰る気になれなかった私は、家がある大岡山を通り越して自分が携わった日吉の物件を見に行くことにした。

本部の好事例にもなった案件で、満室稼働していて融資の返済も順調だ。

結局、私は仕事を頑張って忙しくすることで、孤独という問題に向き合わずに生きてきた。だから、寂しさを埋める方法を仕事以外に知らない。

色々考えていたら、急に肩に重さを感じる。

横に座るおじさんが、こっくりとこっくりと船を漕ぎ、その頭は私の肩の上に乗ってきたのだ。


― このおじさん薬指に指輪してる。それなのに、私は…。

最近は、他人の結婚指輪をチェックして、勝手に落ち込むことが多い。

ぼーっとしていると、左腕をぐっと引っ張られて。私は左隣のちょうど空いた席に移動させられた。

そして私が座っていた席には、どしっと男性が座る。寝ていたおじさんは、気まずそうに頭を直す。

隣に座った男性の顔を見て驚く。

「え、一ノ瀬?なんで、二次会に行かなかったの?」

この記事へのコメント

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No Name
この前終わった『マティーニのほかにも』は主人公がリレー形式で繋がっていて最終回まで全話無料で読み返せたし、何よりステキなお話ばかりで最後に登場した主人公もすぐ誰だか思い出せた。それを参考にしたのかもしれないが、書き手のスキルによってこうも違ってくるのかと…もはや呆れてしまった。 だいたい、一ノ瀬は年下しか恋愛対象ではないとか言ってて、唯もむしゃくしゃしてうっかり彼と関係を持っただけなのに、付き合って終わるとか強引過ぎて気分悪くなった😂
2024/11/28 06:0911返信1件
No Name
あらすじ読んでも氷室唯がどこの誰だか全く記憶に無く。取り引き先のメールに誤って「男の値踏み表」的な恥ずかしいものを添付した間抜け女だっけ... 松本課長とか藤堂とかも どちらさん?状態。ご丁寧にリンク貼ってくれてるけど、けして課金してまで読み返したい話ではない。
2024/11/28 07:118
No Name
以前みたいに連載中は無料開放してくれないと、話が思い出せない。とりあえず、1話目の氷室唯が後輩とハッピーエンドだということは理解した。
2024/11/28 06:543
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