年収4,000万男子の恋愛事情 Vol.8

「2人きりで旅行は微妙…」曖昧な関係の彼女に旅行に誘われたが、煮えきらない男は…

「この間は、本当にごめんなさい」

スーパーに着くと、玲は俺に頭を下げた。

謝られたことで、あの夜のことが一気に蘇る。

「あ、あぁ。酔い潰れることなんて、誰にでもあるし気にしてないよ」

「ありがとう。そう言ってくれると救われるよ。私こんな性格でしょ、だから好きになってくれる人って滅多にいなくて…。やっといい男性に出会えたと思ったら彼女になる前に終わっちゃったり、付き合っても1、2ヶ月で振られちゃったり…とにかく、自信がなくなってたの」


玲はそう言いながら、生鮮食品売り場で柿とジャガイモ、それからハーブのディルを手に取りカゴに入れた。

「そっか。それで、元太に話を聞いてもらってたんだね」

「そうなの。元太ってすごく優しいのね。思ってもない言葉で適当に励ますんじゃなくて、ちゃんとダメなところ指摘して、イジって、でも最後は褒めてくれて…そんな人初めてだった」

― まぁ、いいヤツではあるよな。

お調子者で図々しいところはあるが、根が優しいので、俺も長年友達でいるのだ。

「それでね、ちょっと好きになりかけちゃったのよ」

「えぇ?元太のことを?」

「うん。みんなには内緒ね!でもね、その後に聞いちゃったの。元太には8年も付き合ってる彼女がいることを。ちょうど翔馬くんが来る前だったかな」

― あぁ、今はあいつフリーだけど…。

玲に教えてあげようかと思ったが、とりあえず話を聞くことを優先した。

「それでね、あぁ、なんてツイてないんだろう…男運がなさすぎる。って、お酒を飲む手が止まらなくなっちゃったんだ」

「あぁだからか。だいぶ荒れてたもんね」

「そう。だから、もうどうにでもなれ!っていう気持ちで、翔馬くんとタクシーに乗って、お家に行こうって言った。元太への当てつけもあったと思う」

玲は、話しながら次はひき肉やサーモンなんかを適当にカゴに入れていく。

何を作るのか、ちゃんと考えながらそうしているのかは、わからない。だが聞けない。

「その後の事はほんとに覚えてないんだけど、あの日、何もしないでくれてありがとう」

「いや。当然のことをしたまでだよ」

「もし、そういうことになっちゃってたら、私はまた自己嫌悪の闇に堕ちていって、しばらく立ち直れなかった」


あの時、玲がそんな心境だったとは知らなかったが、俺の理性もたまには役に立つらしい。

玲は、卵や豆腐、納豆などをカゴに入れると小さい声で「よし」と呟いた。

「玲ちゃん、あの…」

「柿とブッラータチーズでカプレーゼ、ディルを入れたポテトサラダ、スープはきのこのポタージュ。メインはサーモンとハンバーグ。お豆腐や納豆は翌朝用よ」

俺が聞く前に、玲はカートの中身を全て説明してくれた。

「え…ちゃんと考えながら入れてたの?」
「まあね。と言いたいところなんだけど、このメモに従っただけなの」

玲は、デニムのポケットから折り畳まれた紙を出した。

「メニューを考えたのはミナちゃん。別荘を出る前に渡されたのよ」

― ミナは料理が得意なのか…。

プロテインなどで食事を済ませるタイプなのだろうと思っていたので、心の中でミナに謝った。

「でも、それをパッと見ただけで暗記したのは私」

「そうだね、すごいよ。さすが東大卒!」と茶化しながら俺が笑うと玲もやっと笑顔を見せてくれた。

その帰り道、俺は玲に、元太が彼女と別れたことを話した。



別荘に戻ると、他の4人はリビングにいて談笑をしていた。

食材を冷蔵庫に入れていると、元太が「ちょっと来い」と手招きし、俺はリビングから離れた。

「なぁ翔馬、気づいてた?十番でぶつかった美女、たぶんミナちゃんだよ。あのビション見覚えあるもん」

「あ、そうそう。気づいてたよ」

「そうなの?今日じゃなくて、もっと前にわかってたってこと?翔馬、ミナちゃんにも会ってるのか…?」

元太には香澄と会っていることしか言っていないからか、質問攻めに遭う。

「一度だけね。それも、コムギの散歩中にたまたまだよ」

「そうなのか。でも偶然も重なると、必然?はたまた運命?って…思っちゃうよな」

元太とは長い付き合いだ。だから俺のことを俺よりわかっていると思う瞬間もあるが、何を言っているのか意味不明な時もある。

「いやいやないよ。なんだよ、占い好き女子みたいなこと言って。気持ち悪いな」

そう言って誤魔化すしかなかった。今回は香澄のことをもっと知るための泊まり軽井沢なのだから。

「はいそこまで。いいかげん、翔馬さん借りてもいいですか〜?」

背後からスッと現れた香澄に驚く。彼女がいつからそこにいたのかわからないが、なんだか笑顔が引きつっていて、不自然に感じたのは気のせいだろうか。

香澄と一緒にリビングに戻ると、ミナと玲が早速調理を始めていた。


東京の喧騒から離れ、ゆったりとした時が流れる旧軽井沢の夕刻。

まさか、この後のディナーが修羅場になるなんて、この時はその予兆さえ感じられなかった。


▶前回:「天然なのか、わざとなのか…」体を密着させスマホ内の写真を見せてくる31歳女に、男は…

▶1話目はこちら:「LINE交換しませんか?」麻布十番の鮨店で思わぬ出会いが…

▶Next:11月8日 金曜更新予定
香澄が爆弾発言。そして…

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この記事へのコメント

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No Name
柿とブッラータでカプレーゼ、ディルを入れたポテトサラダ、スープはきのこのポタージュ。メインはサーモンとハンバーグ。お豆腐や納豆は翌朝用

いつの間にブッラータ買った? ポテサラは具なしディルのみ?ポタージュって牛乳使わない派?ハンバーグにオニオンやパン粉は入れないのね。
鮭は翌朝に回したら? ww
とりあえず何なの、この連載のつまらなさ。月・木・金どれも似たような応援出来ない登場人物ばかり。せめて
もっとテンポよく話進めて欲しいかな。余計なシーンが多過ぎる!
2024/11/01 06:0114返信2件
No Name
香澄のことをもっと知りたいだけなら何も軽井沢まで来なくてもいいし、泊まりの誘いは “ちゃんと付き合ってから行こう” とはぐらかせばいい。皆を巻き込んで『テラハ』ごっこしなくても😂
秋山さん影薄っ、気の毒になる。
2024/11/01 05:4512
No Name
なぜにこのメンバーで旅行に行かねばならぬ?
女性同士は友達でもないのに。
2024/11/01 08:248返信1件
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