2024.06.11
東京3C男子 Vol.1富山の山あいの町に生まれた春香は、幼い頃から東京に憧れていた。
雑誌やテレビの中でキラキラ光り輝くその街の住人になりたいとずっと夢見ていた。しかし、5歳で父親を亡くし、女手一つで育ててくれた母親の頼みで、大学を卒業するまでは地元から出られなかった。
けれど、そんな春香もついにこの春、就職を機に念願の上京を果たすことができた。就職先はなんと、カルチャー系雑誌を多数手掛ける憧れの出版社だ。
頻繁に東京に出向かなければならなかった就職活動は、肉体的にも金銭的にも決して楽ではなかった。でも、憧れの東京で就職をするためだと思えば、なんてことはない。居心地の悪い夜行バスに揺られるたびに、春香の期待はむしろ膨らんでいく。
そんななかで出会ったのが、春香の5つ年上で27歳の、光司だったのだ。
光司との出会いは、先に上京していた高校時代の同級生から誘われたとあるクラブイベントでのこと。その子から、彼氏の先輩だと紹介された。
藝大出身で、映画のスチールやファッションフォトを中心に撮影するカメラマンという光司は、クラブ慣れしていない春香にも気さくに対応してくれた。
あまりにも場違いなリクルートスーツに身を包んでいた春香は、言い知れない居心地の悪さから救ってもらったような気がして、光司の優しさに当然のごとく胸を高鳴らせたのだ。
夜の盛り場においても、白い無地のTシャツというシンプルな装い。無精ヒゲと無造作なマッシュヘアにもかかわらず、光司は清潔感と上品さを兼ね備えているように見えた。
肩の力が抜けている余裕…。春香から見れば光司はまさに、東京に根付いている男性だった。
連絡先を交換すると、光司はその後も、春香が上京するたびに気にかけてくれた。恋愛感情を抱くのは当然だ。
そして──。
春香の不器用なアプローチを、彼は大きな懐で受け止めてくれた。
◆
「ウィリアム・エグルストンはさ、構図の先にある物語を感じさせるんだよね。被写体の人となりや背景まで見えて、一瞬で世界に取り込まれるというか…。僕がさ、ノーマン・ロックウェルの絵が好きなのも同じ理由なんだ」
「へぇ…」
写真展鑑賞後、光司は展示の余韻に浸りながら、写真美術館に併設されているカフェ『フロムトップ』で得意げに持論を語っている。
正直、光司の話す内容は、春香には理解できないことも多い。ただ、アーティスティックな話題を夢中になって語る彼の表情を眺めるのが好きだった。
フルーツティーの爽やかな味わいさえ、光司とのデートでは脇役になる。ほのかに感じた感動を自分の中だけで消化しながら、春香は笑顔で相づちを打つのだった。
つまり光司は、春香にとっては“東京のカルチャー”を具現化した存在なのだ。
彼の実家は世田谷の資産家で、生まれながらにしてアートが身近にあったという。自宅には何千万もする絵画が飾られ、幼児期から親に連れられ歌舞伎やクラシックコンサートを鑑賞していたそうだ。
カメラとの出合いも、小学生の時。新聞記者であった祖父のコンタックスを譲り受けたところからだという。映画館への往復だけで半日以上かかる上に、アルバイトで遊びのお金を作っていた春香の環境とは、大きな違いだ。
「…沢田教一や一ノ瀬泰造にも憧れるけど、平和ボケの環境で育った俺が戦場で写真を撮っても説得力はあるのかな」
光司がつぶやくひとつひとつの言葉が、春香の知的好奇心を刺激する。背伸びをしてでもその世界に追いつきたいと、春香はいつも必死で手を伸ばす。
「それを言うなら現代人はみんなそうだよ。むしろ光司みたいに余裕のある人じゃなきゃ、見えない景色もあると思うな」
「なるほど、確かにね…」
あてずっぽうでも会話が通じると嬉しくて、まるで神様と通じたような気がした。ふたりの関係性は恋人同士というより、教祖と信者のようなものだったのかもしれない。
料理は女がやる事だからとか思ってる男よりよっぽどいいじゃない。
食に何のこだわりもなくパックの白米とレトルトカレ食べる独女の方が嫌。
どうか、職業差別要素の濃いストーリーになりませんように。そもそもこの田舎娘が東京出身の彼をを色眼鏡で見て崇拝し、彼の本性に気づかなかっただけ。
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